2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20350002
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
常田 貴夫 The Institute of Physical and Chemical Research, 次世代分子理論特別研究ユニット, 副ユニットリーダー (20312994)
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Keywords | 時間依存密度汎関数法 / 電子状態間相互作用 / 非断熱相互作用 / 多配置密度汎関数法 / ポテンシャルエネルギー曲面 / 光化学反応 / 酸化チタン光触媒反応 / アルカンのisodesmic分解反応 |
Research Abstract |
本研究では、時間依存密度汎関数法(TDDFT)に電子状態間相互作用および非断熱相互作用の効果を導入し、大規模分子の非断熱遷移(内部転換)を含む光化学反応再現を初めて可能にすることを目的としている。本年度の研究実施計画として、TDDFTにもとづく非断熱相互作用計算法の開発と、状態間相互作用を取り込んだ多配置DFTの開発を挙げていた。本年度は、この計画に基づいて研究を遂行した結果、これらの計算法の開発に成功した。TDDFTにもとづく非断熱相互作用計算法についてはこれまでも開発されてきたが、すべて電子状態の変化のみを考慮に入れており、分子軌道の変化を考慮に入れていなかった。しかし、化学において、非断熱相互作用における分子軌道の変化の効果は、電子状態変化の効果と同等であることが分かっている。本年度は、この非断熱相互作用法の定式を導出し、プログラム開発を行なっている。現在、プログラム開発の最終段階である。また、状態間相互作用を取り込んだ多配置DFTについては、特定の励起配置を取り込むことで電子相関のダブルカウンティングを回避した方法を開発した。定式化とプログラム開発を終え、試行計算を行なった。その結果、単配置DFTの双極子モーメントの結果を改善することが分かった。しかし、解離エネルギーを過大評価し、定量的なポテンシャル曲面を描けないことも分かった。これは軌道回転の効果の無視が原因である。この問題を解決するため、この方法への自己無撞着(SCF)法の導入を行なっている。 さらに、光化学反応計算に向けた多様な応用計算も行なっている。例えば、酸化チタン光触媒計算では、吸着分子→酸化チタンへの1電子移動による直接酸化を先駆とし、生成したカチオンラジカルの燃焼反応で光触媒反応が進行することを初めて明らかにした。他にも、アルカンのisodesmic分解反応におけるDFTの問題の解決などにも成功した。
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