2008 Fiscal Year Annual Research Report
遷移状態を配向制御した化学反応による立体効果の直接観測と発現機構の解明
Project/Area Number |
20350006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
笠井 俊夫 Osaka University, 大学院・理学研究科, 教授 (20152613)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
蔡 徳七 大阪大学, 大学院・理学研究科, 助教 (20273732)
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Keywords | 反応遷移状態 / 配向分子線 / 反応分岐 / OHラジカル / 分子の電子密度 / 反応制御 / 立体効果の直接観測 / 単一量子状態 |
Research Abstract |
化学反応は始状態から遷移状態を経て生成物へと至る、ここで反応遷移状態における化学種の構造や内部状態分布は反応生成物の反応分岐に大きな影響を及ぼすことが考えられる。我々は反応に関与する反応物の配向状態を規定して反応を開始させることで、遷移状態における衝突錯剛体の構造を規定し、生成物の反応分岐の発現機構について解明することを目的で研究を行った。本研究では、OH+HBr反応を取り上げた。六極不均一電場を用いてOHラジカルの単一量子状態を選別し、誘導電場及び配向電場を用いてOHラジカルの配向状態を実験室系に関して配向選別することに成功した。配向電場の極性を変化させることで反応において、OHラジカルのO端、H端及び無秩序配向にけるHBr反応の反応断面積を求めた。反応により生成したBr原子は真空紫外光(154nm)を用いたレーザー誘起蛍光法により検出し。実験結果から、O端からの反応はH端からの反応に比べ約3倍、反応性に富むことが明らかになった。実験結果から反応が起こり得る衝突角を求めたところ、反応の許容角は117°であった。(ここで角度はO端からの衝突を0°と定義している。)実験結果を理解するために、量子化学計算からOHラジカルのHOMO準位における電子密度を求めたところ、電子軌道の空間的広がりはO端に局在していることが明らかになった。この結果は、O端に局在した電子密度がこの反応に強く関与していることを示すものである。
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