2008 Fiscal Year Annual Research Report
キラルホスホニウム塩の構造制御を基盤とする触媒機能創出と実践的不斉合成への活用
Project/Area Number |
20350018
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大井 貴史 Nagoya University, 工学研究科, 教授 (80271708)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦口 大輔 名古屋大学, 工学研究科, 講師 (70426328)
大松 亨介 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (00508997)
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Keywords | 有機化学 / 不斉合成 / ホスホニウム塩 / 酸・塩基触媒 / 分子認識 |
Research Abstract |
平成20年度に見出した、アミノホスホニウム塩の構造についての新しい知見に基づいて検討を進め、以下のような成果を得た。 我々が独自に開発した水素結合部位をもつキラルなテトラアミノホスホニウムカチオンが、シンプルな有機分子であるフェノール類3分子を取りこんだ水素結合ネットワークを構築し、イオン間相互作用の助けをかりて、先例のない分子集合体を自発的に形成することを見出した。得られた集合体の特徴として、キラルな有機カチオン分子がもつ三次元の情報がフェノール分子を介して増幅され、柔軟でありながら精密な分子ポケットを形作っていることがあげられる。さらに、この分子集合体を触媒として機能させるため、構成要素の一つであるフェノール類と類似した構造をもつアズラクトンを取り上げ、これとα,β-不飽和N-アシルベンゾトリアゾールとの共役付加反応に適用することで、高立体選択性の獲得に成功した。またこの時、集合体の構成要素の全てが反応の立体選択性に密接に関わっていることを明らかにした。加えて、溶液中での触媒の構造を、分子集合のしやすさが濃度の影響を大きく受けることを利用して推定し、集合体の形成が高い立体選択性で反応を進行させる鍵であることを強く示唆する結果を得ている。複数の弱い力の組み合わせにより、高性能の触媒として働く分子集合体が自発的に組み上がるという成果は、単純な有機分子の組み合わせから無数の触媒構造、ひいては新しい触媒機能が生まれる可能性を明確に示すものであり、有機分子のみからなる触媒を自在に設計するための新たな手法を提供し、有用化合物の環境調和型化学合成の推進、さらにはこの分野の発展に大きく寄与するものと期待される。
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