2008 Fiscal Year Annual Research Report
スピン偏極電流実現のための大環状芳香族アミン分子ワイヤーの設計と開発
Project/Area Number |
20350065
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 一義 Kyoto University, 工学研究科, 教授 (90155119)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 彰浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (90293901)
笛野 博之 京都大学, 工学研究科, 助教 (30212179)
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Keywords | 大環状有機分子 / ラジカル分子 / 芳香族アミン / スピン偏極 / 混合原子価状態 |
Research Abstract |
スピン偏極電流を実現するための大環状芳香族アミン分子ワイヤーの開発を最終目標として、本年度においては中枢部となる分子ワイヤーのうち動的スピンを担う大環状芳香族アミン分子の合成経路の確立を目指した。大環状芳香族アミン分子はその結合様式の違いによってパラ結合型、メタ結合型、メターパラ混合結合型の3種類に類別することができるが、そのいずれの種類の分子も簡便に合成することのできる方法を確立することができた。電気化学測定の結果、結合様式の違いを反映して特徴的な多段階酸化過程を示すことが明らかとなった。また大環状化合物の各酸化状態を電子スピン共鳴法により調べた結果、メタ結合部位を有する全ての大環状化合物において、高スピン状態が発現することがわかった。一方、パラ結合体においては、発生スピンが分子内を非局在化していることが明らかとなった。さらに、大環状部位を複数有する多環性大環状芳香族アミン分子についても合成を試み、興味深いいくつかの分子の合成に成功した。これらの分子も多段階酸化状態を示し、酸化体が高スピン状態であることを確認することができた。以上の結果より、動的スピンを担う分子として大環状芳香族アミン分子が適切であることを明らかにすることができた。このことは局在スピン源としてニトロキシドラジカルを大環状分子の適切な位置に導入することにより、局在スピンと動的スピン間に強磁性的相互作用を発現できることを保証するものであり、次年度以降の目標である局在スピンと動的スピンが分子内に共存する複合分子の開発にとって意義ある結果が得られたものと考えられる。
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Research Products
(5 results)