Research Abstract |
本研究は社会安全性確保を志向し,カドミウムCd,鉛Pb,水銀Hgなどの土壌中重金属イオンの簡易迅速定量法を開発することを目標とする.本研究で提案する計測法は1)土壌検液作成,2)濃縮,3)分離検出の三段階から構成され,各段階において重金属イオン認識素子チアカリックスアレーンTCAを機能させる.本年度は前年度の1)「迅速・選択的土壌検液作成法(TCA抽出法)」の確立を受け,3)を検討し,以下の成果を得た. 1.重金属イオンのHPLC定量システムの確立:土壌溶出液中のCd,PbおよびHg測定を想定し,これらソフト金属の錯体への誘導体化,および速度論的識別モード(KD-)HPLC分離-吸光検出系の検討を行った.誘導体化配位子を種々探索し,ジアセチルビス(4-フェニル-3-チオセミカルバゾン)(DBS)がこれらソフト重金属イオンの錯体化に適していることを見いだした.本DBS-KD-HPLC系におけるCd,Pb,Hgの検出限界はそれぞれ0.63,2.7,0.91ppbとなり,Hgを除き土壌溶出試験環境基準(それぞれ10,10,0.5ppb)を下回った.よって本系はCd,Pb汚染の有無の判断に適用可能な感度を持つことを明らかにした.また,50~100倍の遷移金属イオンの妨害をクリア出来,土壌溶出液へ適応できること明らかにした. 2.土壌検液作成とKD-HPLC測定との結合:土壌溶出液中の重金属イオンはそれぞれTCA錯体として存在している.これにDBSを添加したところ,Cd錯体の配位子置換が不完全であった.そこで前段でのTCA錯体の酸分解が有効であることを見いだした.これにより土壌中重金属のTCA抽出/DBSによる誘導体/KD-HPLC定量システムを完成させることができ,また実際の土壌試料への適応が可能となった.
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