Research Abstract |
本研究は社会安全性確保を志向し,カドミウムCd,鉛Pb,水銀Hgなどの土壌中重金属イオンの簡易迅速定量法を開発することを目標とする.本研究で提案する計測法は1)土壌検液作成,2)濃縮,3)分離検出の三段階から構成され,各段階において重金属イオン認識素子チアカリックスアレニンTCAを機能させる.本年度は前年度までに完成させた1と3の結合システム「土壌中重金属のTCA抽出/ジアセチルビス(4-フェニル-3-チオセミカルバゾン)(DBS)による配位子置換誘導体化/速度論的識別モード(KD-)HPLC定量システム」について,性能を評価した.実際の土壌溶出液の分析において,共存金属イオンの妨害が想定される.そこで1.0×10^<-7>mol dm^<-3>のCd,Pbに対する主な金属の許容限界を調べたところ,Cu,Co,Ni,Mn,Znは10倍量の存在を許容した。また,Feについてはマスキング剤として系に4.0×10^<-3>mol dm^<-3>のF^-を添加すれば100倍量の存在を許容した.実際の土壌試料から得られた溶出液に1.0×10^<-7>mol dm^<-3>のCd,Pbをスパイクし,回収率を求めたところそれぞれ101,94%となり本法の高い信頼性を示す結果となった.また溶出液中のCdについて計測値をフレームレス原子吸光法とクロスチェックした結果,良好な一致を見た.以上,TCA抽出とDBSによる配位子置換誘導体化,KD-HPLC分離検出を結合させ,土壌中超微量金属イオンの迅速化学計測法を完成させた.さらに薄層クロマトグラフィー分離検堀系を検討し,簡易化の目処を得た.今後土壌分析を通した社会安全性の確保に資すると期待できる.
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