2008 Fiscal Year Annual Research Report
磁気円二色性分光法による強磁性半導体の電子構造の解明
Project/Area Number |
20360013
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 功兒 National Institute of Advanced Industrial Science and Technology, エレクトロニクス研究部門, 副研究部門長 (90356395)
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究の目的は(Ga,Mn)Asを中心とする強磁性半導体の電子構造を明らかにすることにある。この物質の合成以来すでに13年が経過し、この間、大量の論文が出版されてきたにもかかわらず、その電子構造はいまだ不明なままとなっている。 本代表者が世界に先駆けて開発してきた磁気円二色性(MCD)分光法は、強磁性半導体の電子状態を探る最も強力な手法である。我々が2008年にPhysical Review Letters誌に報告した(Ga,Mn)AsのMCDスペクトルの解析結果は、世界的な強い反響を引き起こした。我々の結果は、従来知られていた(i)Zeeman分裂したsp半導体バンドに加えて、(ii)非常に幅広い不純物バンドの存在を示しており、不純物バンドの存在を無視したこれまでの電子構造モデルの根本的な見直しが必要なことを明確に示していたからである。我々の研究結果をどう理解すべきかに関しては、現在議論が論争に発展するほど活発化している。本研究はMCDスペクトルの更なる解析を行うことにより、磁性半導体の電子構造に関する統一的な理解を得ることを目的としている。 平成20年度は、条件を種々変化させて成長した(Ga,Mn)As薄膜や、(Zn,Mn)Seなどの類似磁性半導体薄膜のMCDスペクトルを詳細に解析するとともに、理論家との議論を進めた。その結果、(Ga,Mn)Asには上記の(i)、(ii)の光学遷移に加えて、バンド端付近に非常に孤立的な第3の光学遷移が存在することが新たに判明した。(Ga,Mn)Asが強磁性を示す原因は、このような複雑な電子状態に密接に関連していることが示唆される。この第3の遷移が、励起子遷移であるか、または何らかの不純物遷移であるかはまだ不明である。この重要な発見を中心として、H21年度以降にはMCDスペクトルの解析をさらに進める予定である。
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