2010 Fiscal Year Annual Research Report
磁気円二色性分光法による強磁性半導体の電子構造の解明
Project/Area Number |
20360013
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安藤 功兒 独立行政法人産業技術総合研究所, フェロー, フェロー (90356395)
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Keywords | スピントロニクス / 磁性半導体 / 電子構造 / 磁気円二色性 / HCD / ゼーマン分裂 |
Research Abstract |
磁性半導体の最大の特長はスピンキャリアの間の相互作用であり、これはバンド構造のZeeman分裂として現れる。従来より多様な磁性半導体の研究が行われてきたが、そのバンド構造やスピンキャリア相互作用は十分には明確ではない。特に強磁性を示す(Ga,Mn)Asは、多くの関心を集めているが、この物質が初めて合成されてから14年経過した現在に至るも、その電子状態(p-d交換相互作用、フェルミ準位レベルなど)に関するコンセンサスは得られておらず、論争が続いている。本研究では、本代表者が開発してきた、磁気円二色性(MCD)分光法を用いて磁性半導体の電子状態を理解することを目指した。 本年度は(Zn,Cr)Te、(Cd,Mn)Te、(Cd,Cr)Te、(Cd,Fe)Te、(Cd,Co)Te、(Zn,Mn)Te、(Zn,Co)Te、(Zn,Ni)Te、(Zn,Fe)Teなどの多様なII-VI族磁性半導体物質のMCDスペクトルの測定と解析を行い、Mn系においては従来全く予想されていなかった異常がZeeman分裂が起きていることを見出して報告した。さらにこの知見を元にして、多種多様な条件で成長・処理した強磁性(Ga,Mn)AsのMCDスペクトルの解析を行った。その結果、現在大きな論争となっているこの物質におけるZeeman分裂の存在の有無に関しては、明確なZeeman分裂が存在することを確認した。またそのスペクトル形状の詳細な解析からは、II-VI族磁性半導体と異なり、(Ga,Mn)AsにおいてはZeeman分裂する部分が試料中に不均一に分布しているという、本物質の本質を理解するための重要な知見を得た。
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