Research Abstract |
本研究の目的は,背景空間が時間とともに変化する環境での幾何計算アルゴリズムを,数値誤差に対してロバストな計算手続きを伴った形で開発するとともに,それを現実問題へ応用することである.本年度は,背景空間が時間とともに変化する場面として,距離計量が時間変化する空間と,人の主観的奥行き距離が時間変化する空間の二つを取り上げて,研究を継続した.距離計量としては,流れの中を航行する際の最短到達時間に着目し,今まで開発してきた最短経路計算法を,台風が通過する場合などの大変化状況にも適用できる計量計算法とそのロバスト計算アルゴリズムへ拡張した.そして,遭難した船舶を救助する場面での救助船ボロノイ図を定義し,その計算アルゴリズムを構成した.このボロノイ図は,遭難した船舶がその後海流に流されて場所を変えるため,単純に距離を取り替えて得られる一般化ボロノイ図とは異なる新しい概念である.したがって,移動する遭難船に最も早く到達できる救助船の航路を見つけなければならないが,その計算法が構成できた.主観的奥行き情報が時間変化する空間については,立体を回転させたとき,それを知覚する奥行きが実際の距離とは異なるという錯覚について,主観距離は,画像の中の被写体を対称性の最も高い立体として解釈する数理モデルによって予測できることを確認できた.それに基づいて,錯視量の大きい立体を設計し,さらに,支柱のない立体などの制限を設けた場面でも錯視立体を構成できた.
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