2008 Fiscal Year Annual Research Report
好冷微生物の低温環境適応を可能にする分子基盤の解明
Project/Area Number |
20360372
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗原 達夫 Kyoto University, 化学研究所, 准教授 (70243087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 教授 (50135597)
三原 久明 京都大学, 化学研究所, 助教 (30324693)
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Keywords | 好冷微生物 / 低温適応 / 高度不飽和脂肪酸 / エイコサペンタエン酸 / 生体膜 / リン脂質 |
Research Abstract |
海洋性好冷微生物Shewnanella livingstonensis Ac10は低温誘導的にエイコサペンタエン酸(EPA)を生産する。EPAはリン脂質のアシル鎖成分として生体膜に存在する。EPA生合成遺伝子の破壊で得られたEPA欠損株は、本菌にとって比較的高い温度である18℃では野生株と同様に生育したが、4℃では著しく生育が阻害されていた。低温では、EPA欠損株の細胞分裂阻害や、細胞内での異常な膜形成が見られた。EPA含有リン脂質は一般に生体膜の流動性保持に重要であると考えられているが、蛍光物質ピレンを用いて測定した流動性についてはEPA欠損株と野生株で顕著な差が見られなかった。一方、sn-2位にEPAおよびそのアナログを含むホスファチジルエタノールアミン(PE)を化学合成してEPA欠損株に添加し、低温での生育におよぼす効果を調べた。アナログとしては、炭素数20で二重結合数を変えたもの、炭素数18で二重結合数および位置を変えたもの、およびドコサヘキサエン酸(DHA)の11種を用いた。その結果、EPAまたはDHAを含むPEのみが生育を野生株のレベルまで回復させた。その他のアナログを添加した場合の生育特性の比較から、EPAは膜流動性保持以外の機能をもつことが示唆された。本菌の細胞膜全体の流動性に関してはEPA以外の高濃度で存在する不飽和脂肪酸を含有するリン脂質などの寄与が大きく、全脂肪酸に占める割合が5%に過ぎないEPAの寄与は小さいものと考えられた。一方、EPAの欠損によって特異的に量が変動する膜タンパク質が見いだされ、また、特定の膜タンパク質を強制的に高生産することによってEPA欠損株の生育が回復することも見いだした。これらの結果は、生体膜に含まれるEPA含有リン脂質が特定の膜タンパク質の機能発現に重要であることを示しており、それらの間に特異的な相互作用のあることが強く示唆された。
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Research Products
(4 results)