2011 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫由来生理活性物質を利用した新規抗ガン剤開発のための基礎研究
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20380039
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Research Institution | National Institute of Agrobiological Sciences |
Principal Investigator |
山川 稔 独立行政法人農業生物資源研究所, 昆虫科学研究領域, 特任上級研究員 (30183677)
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Keywords | 昆虫 / 抗がん剤 / がん細胞 / 増殖抑制活性 / 精製 / 構造解析 / 新規化合物 |
Research Abstract |
新規の昆虫由来がん細胞増殖抑制物質の同定を目的として、昆虫を出発材料にスクリーニングを行った。タカサゴシロアリ磨砕液の上清を逆相カートリッジSep-Pak C_<18>に吸着後、アセトニトリルの濃度を変えて溶出することにより、粗精製を行った。溶出画分のがん細胞増殖抑制活性は、ヒト由来細胞7種、マウス由来細胞2種、アフリカミドリザル由来細胞1種を用い、培養正常細胞のマウス線維芽細胞NIH3T3と比較することにより測定した。 スクリーニングの結果、タカサゴシロアリ磨砕液のアセトニトリル30%溶出画分はNIH3T3に対する増殖抑制活性は弱かったが、ヒト由来の悪性リンパ腫DAUD1,線維肉腫HT-1080,白血病細胞Jurkat及びKG-1,肺がん細胞VA13及びマウスT細胞ハイブリドーマDO-11に対してより強い活性を示すことが明らかとなった。この30%溶出画分を出発材料としてJurkat細胞に対する増殖抑制活性を指標に、逆相HPLCを用いてさらなる精製を行った。 単離された活性物質のFT-ICR-MS,^1H-NMR,^<13>C-NMR,NOESY,COSY,HMBC,HMQCスペクトルの解析を行い構造の決定を試みた。その結果、得られたがん細胞増殖抑制物質は1,1'-biphenyl-3,3',4-triolと同定された。この物質はこれまで報告されていない新規化合物であることが明らかになった。 この物質を化学合成し、ヒト由来がん細胞6種とマウス由来がん細胞1種に対するIC_<50>値を調べたところ、4種の細胞に対して100μM以下の値を示し、NIH3T3やヒト胎児由来線維芽細胞の正常細胞には300μMの値であった。 1,1'-biphenyl-3,3',4-triolはがん細胞増殖抑制活性はそれ程強くはないが、単純な新規化合物であり、これをリードとしてより活性の強いものが合成できると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り4年目の平成23年度にカイコ以外の昆虫よりがん細胞の増殖を抑制する新規化合物を分離・精製することに成功し、その構造も明らかとなった。その結果、この物質が新規化合物であることが判明し、特許出願を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は最後の年であるため、当初の計画に従い昨年度同定したがん細胞増殖抑制作用をもつ1,1'-biphenyl-3,3',4-triolの作用メカニズムを明らかにする。さらに、ヨコズナサシガメ磨砕液にもがん細胞増殖抑制活性がみられるため、タカサゴシロアリ同様その物質の単離と構造解析を目指す。
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Research Products
(1 results)