Research Abstract |
平成20年度は,1)中山間地域農業集落の農地資源を活用した放牧モデルの経済分析,2)棚田地域を対象地域とした未活用資源活用方策の検討を行った。 1)農業集落における放牧モデルの経済分析 耕畜連携型水田放牧システムの成立条件とそれによる農地保全効果について,山口県を事例に,実証研究を行った。このシステムでは,耕種側には,約8万円/10aの補助金,畜産側では,飼料費削減が可能である。また,農地の保全,集落の景観の維持,鳥獣害の軽減など,市場では評価されない便益が発生する。この様な事例研究より,耕種側行動モデルと畜産側行動モデルを定式化し,耕畜連携の計量分析モデルを構築した。そして,補助金など外生要因の変化,あるいは農地保全など市場では評価されない便益が,耕畜連携と水田の地代(レント)に及ぼす影響を分析した。 遊休農地の放牧利用が,農地資源を経済的に利活用する上で最適な技術であることを明らかにした。放牧等の低投入型土地利用技術推進には,地域の土地利用計画の見直し,水田での草地管理技術の開発,家畜衛生管理,畜産物評価の見直し,農林地の畜産利用による環境影響の解明が必要である。また,より合理的な放牧システムを目指し,水田での牧草栽培と飼料イネを活用した周年放牧モデルを営農現場で生産者とともに開発した。 2)棚田地域におけれる未活用資源活用方策の検討 岡山県美咲町大垪和西地区では都市住民ボランティアによる棚田保全活動が行われている。しかし,延べ参加者数の減少によるこの活動の衰退が危惧されている。そこで,対象地域の農家を対象として,(1)販売目的でない地元農産物で未活用となっている資源量,(2)地元農産物に関する知識(収穫・加工・調理等)の有無,(3)その様な知識の都市住民への提供の可能性,を明らかにする。また,これらの結果に基づき棚田支援隊活動の推進に向けた,未活用地域資源の活用方策を検討した。
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