2008 Fiscal Year Annual Research Report
先端ゲノミクスによる造血器腫瘍の治療・診断標的分子の同定
Project/Area Number |
20390266
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 誠司 The University of Tokyo, 医学部附属病院, 特任准教授 (60292900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半下石 明 東京大学, 医学部・附属病院, 特任講師 (20344450)
熊野 恵城 東京大学, 医学部・附属病院, 助教 (90396721)
山本 豪 東京大学, 医学部・附属病院, 助教 (70396753)
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Keywords | SNPアレイ / ATL / HTLV-1 / ゲノム解析 / 遺伝子変異 / CD2 / CD28 / BCL11B |
Research Abstract |
ATLは乳児期におけるHTLV-1感染ののち、十数年を経て発症する難治性造血器疾患である。遺伝学的には、HTLV-1感染によって不死化したT細胞に複数の遺伝子異常が生ずることにより腫瘍化に到ると考えられているが、その遺伝的な標的についてはp16遺伝子の欠失などを除いて十分解明が進んでいない。そこで、本年度の研究では、ATLの発症に関与するこのような遺伝変化を網羅的に同定する目的で、170例のATL腫瘍検体についてSNPアレイを用いた網羅的なゲノム解析を行った。解析の結果、ATLでは非常に複雑な遺伝子変化が生じていること、しかし、これらの変化はしばしば共通の遺伝座を標的としていることが明らかとなった。このうち、約20%の頻度で認めれる2番染色体長腕の高度増幅領域からは、当該領域にコードされる唯一の遺伝子としてCD28遺伝子が同定された。CD28はT細胞受容体からの有効なシグナル伝達に必須と考えられる分子であるが、本遺伝子がATLで高度に増幅していることは、本分子のT細胞制御における生理的な機能を考えると極め興味深い。また、14番染色体長腕の増幅領域より同定されたBCL11b遺伝子のトランスジェニックマウスではT細胞リンパ腫を生ずる。このほか、1番染色体におけるCD2遺伝子の欠失や10番染色体のTCF8遺伝子など、このようなゲノム異常の標的遺伝子として同定される遺伝子の多くが、T細胞の機能に重要な役割を担っていることが知られている遺伝子、あるいはT細胞で特に高い発現が認められる遺伝子であった。移譲り、ATLの発症においては、T細胞の機能に関連する遺伝子が遺伝的に障害されることが、腫瘍化の過程において重要である可能性が示唆された。
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Research Products
(4 results)