2008 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光蛋白導入マウスを用いた麻酔薬による抑制シナプス伝達分子調節機構の統合解析
Project/Area Number |
20390412
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西川 光一 Gunma University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00334110)
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Keywords | GABA / GAD65 / synaptic current / IPSC / pain threshold / tonic inhibition / nociception / patch clamp |
Research Abstract |
GFP(緑色蛍光蛋白質)導入遺伝子改変動物を用いた神経細胞イメージングは、生きたマウスやラットで分子の動きを画像化できるため、麻酔薬や疼痛による脳の生理機能変化をシステム的に理解する上で有用である。研究初年度の今年は、GABA合成酵素の一つであるグルタミン酸デカルボキシラーゼ65-kDa(GAD65)のノックアウトマウスを用いて、上位脳におけるGABA濃度の低下が、侵害受容、抑制シナプス伝達、持続抑制にどう影響するかを調べた。 <方法>12-16週のWTとGAD65-/-を使って、全脳・全脊髄から、GABA, glycine, glutamate, aspartateの濃度を測定した。次に、急性侵害受容刺激と炎症疼痛刺激に対する反応の違いを両群で比較した。大脳皮質スライスを作製し、細胞直視下(IR-DIC)に神経細胞からパッチクランプ法を使って、抑制シナプス電流(GABA-slPSCs)を解析した。 <結果>GAD65-/-では、脳内GABA含有量がWTの74%まで減少したが(n=6,P<O.OO1)、他のアミノ酸の代償性変化はなかった。Water-immersion testでは差がなかったが、hot-plate testではGAD65-/-で反応時間の有意な減少が見られた(n=20,P<0.01)。ホルマリンテストでは、GAD65-/-において2相後期の反応時間の増加が見られた。GABA電流から持続抑制を解析すると、tonic currentが30%減少していた(n=7,P<0.01)。 <意義と重要性>GAD65-/-によるGABA量の低下と、持続抑制の減少が一致した。脳におけるGAD65由来GABA濃度の減少が、侵害受容反応と炎症反応の一部に重要な役割を担っていることが判明した。この結果は、痙痛閾値におけるGAD65由来GABAの重要性を初めて証明するものである。
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