2009 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光蛋白導入マウスを用いた麻酔薬による抑制シナプス伝達分子調節機構の統合解析
Project/Area Number |
20390412
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西川 光一 Gunma University, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00334110)
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Keywords | シナプス / プロポフォール / セボフルラン / GABA受容体 / 疼痛 / 鎮静 / tonic current |
Research Abstract |
脳神経細胞間の情報伝達はシナプスを介するネットワークが主要な機能構造であると考えられ、麻酔薬の研究分野でもシナプス伝達への解析を中心に行われてきた。ところが最近、シナプス領域外に存在する受容体の機能と特性が注目され始め、それまで脇役だったはずのシナプス外受容体が脳機能調節の"主役"の扱いとなり始めた。GABAに限定すると、シナプス領域外GABA受容体は、GABAに対する高い親和性と緩慢な脱感作特性から、細胞周囲のGABA濃度センサーとして働き、持続的な電流(tonic current)を提供する。"麻酔薬による中枢神経抑制"に関する研究分野でもこの流れに沿って、2001年プロポフォールがシナプス外GABA受容体を介する抑制を強く増強することが報告されてからは、"シナプスを超えるか?シナプス外受容体の役割"が強調されるようになった。今年度大別すると、次の二つの研究論文成果を得た。一つは、全ての麻酔薬がこのシナプス外GABA受容体をメインに作用する訳ではない、という行動薬理学研究である。セボフルラン、ハロタンなどの揮発性麻酔薬は、確かにこの電流を増強するが、その程度は僅かで、個体レベルでの麻酔感受性変化にあまり貢献しない。にれは、プロポフォールやミダゾラムによる鎮静とかなり状況が異なっている。次に、不安、痛み、ストレスなどが持続すると細胞外GABA濃度が低下し、シナプス外受容体を介する持続的抑制が減少する。GABA濃度が低下した遺伝子改変マウスでの解析から、GABA濃度の低下は熱刺激への痛覚過敏に関与するが、化学刺激への疼痛閾値には貢献しないことが判明し、これを論文発表した。また、以上の成果を公表した学会(第56回日本麻酔科学会)では、最優秀演題賞も受賞した。
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