2010 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光蛋白導入マウスを用いた麻酔薬による抑制シナプス伝達分子調節機構の統合解析
Project/Area Number |
20390412
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
西川 光一 群馬大学, 大学院・医学系研究科, 准教授 (00334110)
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Keywords | 発達 / GABA / Glycine / 可塑性 / 空間認知 / 臨界期 / GFP / 遺伝子改変マウス |
Research Abstract |
発達期の脳に対する全身麻酔薬の長期的影響は、麻酔科医のみならず社会的にも注目を集める重要なテーマである。1990年代後半から、新生げっ歯類への麻酔薬投与が神経毒性と学習障害を起こすことが報告され、最近では新生霊長類でも麻酔薬が予定細胞死(アポトーシス)を増加させることが明らかとなった。麻酔投与後に観察されるアポトーシスの増加が、はたして学習障害や異常行動と直接的に関連するのか、我々は今年度の研究実施計画に沿って、次の研究を行った。発達期の脳への麻酔薬の影響:出生後1-7日目の蛍光蛋白導入マウスに麻酔薬(セボフルラン1.5%、自発呼吸下に6時間)を投与して、長期的な学習能力や行動異常に関する実験を行った。生後3ヶ月までの成長と発達過程で、体重増加に有意な群間差はなく、またモリス水迷路試験での空間認知能力(2週にわたって10回以上施行)においても、セボフルラン投与群はcontrol群と有意差がなかった。一方、非学習系不安を評価できる高架式十時迷路テストでは、セボフルラン投与マウス群で、closed armに存在する時間が有意に延長していた。この結果から、僅かではあるがセボフルランが脳内神経伝達物質のバランスなどに長期的な影響を及ぼす可能性が示唆された。一方、GFP神経細胞の可視化による掬制系神経細胞(GABA neuron)への影響に関しては、セボフルラン(1.5%、6時間)投与による有意な変化が観察されなかった。しかしこれは神経細胞数の比較であるため、抑制シナプスの強さに影響がなかったとは結論できない。さらに研究の問題点として、使用した麻酔薬の濃度・時間は適切であったか疑問が残る。マウスにおける臨床麻酔濃度は3%近くであるが、この濃度では呼吸抑制が顕著になる。呼吸や循環動態は問題なく保たれていたのかなど、今後詳細な検討が必要である。
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