2011 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光蛋白導入マウスを用いた麻酔薬による抑制シナプス伝達分子調節機構の統合解析
Project/Area Number |
20390412
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西川 光一 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00334110)
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Keywords | 抑制シナプス / GABA / GFP / 麻酔薬 / 可塑性 / Glycine / tonic inhibition / 疼痛閾値 |
Research Abstract |
GFP(緑色蛍光蛋白質)導入遺伝子改変動物を用いた神経細胞イメージングは、生きたマウスやラットで分子の動きを画像化できるため、麻酔薬や疼痛による脳の生理機能変化をシステム的に理解する上で有用である。我々はGFP導入マウスを使って、生後間もない時期のセボフルランの暴露がGABAニューロンにどのような影響を与えるかなどの検討を行ってきた。最終年度は、小胞型GABA/glycineトランスポーターヘテロマウス(VGAT+/-mice)を用いて、脊髄におけるGABAとglycineの神経細胞小胞内への取り込みを担うトランスポーター低下が、侵害受容、抑制シナプス伝達にどう影響するかを調べた。 <方法>12-16週のWTとVGAT-/-を使って、全脳・全脊髄から、GABA,glycine,glutamateの濃度を測定した。次に、急性侵害受容刺激と炎症疼痛刺激に対する反応の違いを両群で比較した。脊髄スライスを作製し、細胞直視下(IR-DIC)に脊髄の後角神経細胞からパッチクランプ法を使って、抑制シナプス電流(GABA-sIPSCs)を解析した。 <結果>VGAT+/-マウスでは、VGAT量がWTの約半分まで減少していたが、VGATの低下に伴うアミノ酸量の代償性変化はなかった。GABA作動性麻酔薬プロポフォールやNMDA受容体拮抗作用のあるケタミンへの感受性には変化がなかったが、ホルマリンテストで、VGAT+/-において2相後期の反応時間の増加が見られた。脊髄シナプスレベルでは、自発性グリシン電流の低下が見られた。 <意義と重要性>VGAT+/-マウスでは、VGATトランスポーターの低下に伴いGABA/glycineの取り込み量が減少するため、持続的炎症性疼痛が増大する可能性が示唆された。この事実から、VGAT蛋白が、炎症性疼痛治療の分子標的になるかもしれないことを示す貴重な結果である。
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