2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20390433
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
杉原 一廣 Hamamatsu University School of Medicine, 医学部, 准教授 (00265878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
幸村 康弘 浜松医科大学, 医学部附属病院, 講師 (50332995)
間賀田 泰寛 浜松医科大学, 光量子医学研究センター, 教授 (20209399)
伊東 宏晃 浜松医科大学, 医学部附属病院, 准教授 (70263085)
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Keywords | 分子標的治療 / 糖鎖 / スプライシングファクター / 腫瘍血管内皮細胞 / ペプチド / リボゾーム / 肺転移 |
Research Abstract |
上皮細胞の癌化により細胞表面の糖鎖構造は量的・質的に変化する。しかしながら細胞表面の糖鎖構造の変化と糖鎖依存性癌転移機構の関連については明確でない。そこで、我々は血管内皮細胞表面のレセプターとリガンドに着目し、peptide displaying phage libraryをスクリーニングして糖を代用するペプチドを探した。クローニングしたペプチドIELLQAR(I-ペプチド)をマウス尾静脈より投与するとメラノーマ細胞(B16 FT-III)の肺転移を抑制することを確認した。 同定したIペプチドは、血管内皮表面の未知のレセプター(I-ペプチドレセプター:IPR)と結合する。そこで、IPRを同定するべくプロテオミクスを用いて実験をすすめ、2つのIPRを同定した。1つが肺血管内皮細胞に発現するser/arg-rich alternative mRNA splicing factor(Sfrs)であった。本来、核内や細胞質に存在するSfrsが細胞膜へ移動し糖鎖構造と結合するという新事実が判明した。抗腫瘍効果を有する薬剤とI-ペプチドを含むリポゾームを合成し、Sfrsを発現する肺血管内皮細胞を標的としてマウスへ投与するとメラノーマ細胞(B16 FT-III)の肺転移を完全に抑制できることを確認した。 さらに、もう一方のIPRは悪性腫瘍血管内皮の血流側に特異的に発現することが判明した。そこで、同定したペプチドを用いたドラッグデリバリーシステム(DDS)が有効な標的薬剤となり得る可能性が示唆されている。 (まとめ)本年度の研究成果として、糖鎖依存性の肺転移機構を明らかにし癌細胞の受け皿となる細胞と分子を同定し、肺転移を防ぐ薬剤と方法を確立した。さらにIPRが悪性腫瘍血管内皮血流側に特異的に発現することが明らかとなり、我々が同定したペプチドを用いたDDSを現在開発中である。
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