2009 Fiscal Year Annual Research Report
炎症後色素沈着の機序の解明と低瘢痕創傷治癒に関する基礎的研究
Project/Area Number |
20390457
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
岡崎 睦 Tokyo Medical and Dental University, 医歯学総合研究科, 教授 (50311618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗田 昌和 杏林大学, 医学部, 助教 (20424111)
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Keywords | 創傷治癒 / 瘢痕形成 / 遺伝子発現 / 線維芽細胞 / 部位特異性 / 色素沈着 |
Research Abstract |
1.健常ヒト由来の線維芽細胞の解剖学的部位特異性を明らかにするため、形成外科の手術症例より顔面、体幹皮膚由来の真皮線維芽細胞をexplant法により初代培養し、細胞のライブラリーを作成した。 2.臨床的に、顔面と体幹では瘢痕形成、色素沈着など、創の成熟に大きな差異を認めることから、文献的に創成熟にかかわりが深いと報告されている細胞外器質、サイトカインなど12種類の遺伝子についてmRNA発現を、Real time PCRを用いて解析した。その結果、コラーゲンや、フィブロネクチンなどの細胞外器質、創局所の瘢痕形成に強い影響を及ぼすTGF-β,CTGFについては体幹真皮由来の線維芽細胞は、顔面真皮由来の線維芽細胞に比較して有意に高発現であるという結果が得られた。 3.次に、色素沈着に影響をもつサイトカインとして、bFGF,HGF,SCFの発現を調べた。SCFは体幹由来線維芽細胞で有意に高発現であった。有意差の認められた各因子に関しては、培養上清中の蛋白定量を行い、同様の傾向が認められることを確認した。これらの知見は、体幹の創傷は顔面の創傷に比較して瘢痕形成、色素沈着傾向が強い、という臨床的な知見と非常によく一致するものである。 肥厚性瘢痕になりやすい傾向などの創成熟の部位特異性には、創にかかる物理的なストレスなどの外的要因もかかわっている可能性もあるが、われわれの研究によって、内在する線維芽細胞の性質自体が異なっていることも、一つの要因である可能性があることが明らかになった。 手掌や、足底など非常に高い特殊性を有する部位を除いて、機能的な線維芽細胞の部位特異性を明らかにした研究は過去になく、今年度までに得られた結果は、醜状瘢痕を治療対象として扱う形成外科領域においては非常に意義深い知見であると考えられる。
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Research Products
(3 results)