2010 Fiscal Year Annual Research Report
口唇口蓋裂をモデルとした音声言語の生成、障害および可塑性のメカニズムの解明
Project/Area Number |
20390521
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
小野 卓史 東京医科歯科大学, 大学院・医歯学総合研究科, 教授 (30221857)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
誉田 栄一 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究科, 教授 (30192321)
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Keywords | 口唇口蓋裂 / 構音障害 / fMRI / 口蓋裂言語 / 聴覚連合野 |
Research Abstract |
矯正歯科臨床において口唇・口蓋裂患者を診療する際、末梢構音器官の形態や機能に大きな障害を有しないにも関わらず、特有の構音障害である口蓋裂言語が長期に残存する場合がある。口蓋裂言語を聴取した際、高次中枢としての脳がそれをどのように認識しているのかは、口蓋裂言語を有する口唇・口蓋裂患者自身のみならず健常者においても未だ明らかにされていない。そこで今回我々は、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging:fMRI)を用いて健常者における口蓋裂言語聴取時の聴覚連合野における脳賦活パタンを解析した。被験者は健常成人6名とし、MR装置内で雑音軽減機能を有する専用ヘッドフォンを通じて正常発音および口蓋裂言語(声門破裂音)による単語を聴取させfMRIデータを採得した。また、聴取した発音が正常発音か口蓋裂言語であるかを判断する識別実験を同時に行い、その正答率と反応時間を計測しMann-Whitney検定により有意差を検討した。fMRIデータはSPM5を用いて個人ならびに集団解析を行った。fMRIのデータから、聴覚連合野は正常発音聴取時では左側が賦活するのに対して、口蓋裂言語においては両側が同程度賦活することが認められた。識別実験から、正常発音と口蓋裂言語の正答率に有意差は認められなかったが、口蓋裂言語では反応時間が有意に遅延した。言語処理の優位半球は左側であることが知られているが、近年の研究では聴覚連合野を含む左側聴覚野は、音の急速変化の処理に特化し言語認知に有利に働くのに対し、右側聴覚野は、周波数やピッチの変化などに対応するといった説も提唱されている(高橋、2010)。本研究で口蓋裂言語として使用した声門破裂音は子音が断続的に聞こえるため識別に長い時間を要し、口蓋裂言語の認識処理には右側聴覚連合野が関与する可能性が示唆された。
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Research Products
(8 results)