2011 Fiscal Year Annual Research Report
中国の初期仏教寺院とその源流にかんする考古学的研究
Project/Area Number |
20401031
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡村 秀典 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (20183246)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 穣 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (60201935)
船山 徹 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (70209154)
向井 佑介 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (50452298)
|
Keywords | 中国 / 仏教 / 蛍光X線分析 / 銅器 / 南北朝時代 / 正倉院 |
Research Abstract |
今年度は、仏教にともなって西域から中国に伝わったと考えられる金属製仏具とその製作技術に焦点をあて、蛍光X線分析をふくむ考古・理化学的調査を実施した。(1)南京大学文化与自然遺産研究所と共同で江蘇省句容市の宋・元嘉十六年(439)墓と同省江都市大橋害蔵から出土した一群の銅器について調査をおこなった。その結果、仏教の伝来にともなって中国にもたらされたと考えられてきた響銅器には、銅錫鉛三元系合金と銅錫二元系合金との2種類があり、まず4世紀に二元系響銅の製品が西方から中国に伝来し、中国における三元系響銅の制作は遅くとも5世紀の南朝にはじまり、後れて6世紀に二元系響銅が普及していったこと、それが8世紀における日本正倉院「佐波理」の直接の源流になることを明らかにした。(2)和泉市久保惣記念美術館に収蔵する胡人獣紋杯などの中国響銅を調査し、6世紀の二元系響銅技術は中央アジアのソグドに由来すること、それが唐代金銀器のさきがけになったことを明らかにした。(3)中国社会科学院考古研究所・河北省文物研究所と共同で北朝墓から出土した一群の銅器について調査をおこなった。その結果、北朝では6世紀に南朝の影響を受けて三元系響銅明器の制作がはじまったこと、箸や匙などの実用器には二元系響銅が用いられたこと、鋏や毛抜きなど弾力性を必要とする実用器には、中央アジアに由来する銅亜鉛二元系合金の黄銅が用いられたことが明らかになった。(4)以上3項目の実地調査に加えて、仏教学・中央アジア史学の研究分担者と共同研究をおこない、響銅(佐波理)は唐宋代には「鈔鑼」と呼ばれ、その語源はサンスクリットに由来する可能性があること、黄銅は仏典では「鍮石」と呼ばれ、4世紀ごろに西域からもたらされたことを明らかにした。
|
Research Products
(6 results)