2009 Fiscal Year Annual Research Report
四川省成都平原蒲江県域における秦漢代製鉄遺跡の調査研究
Project/Area Number |
20401032
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
村上 恭通 Ehime University, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 正治 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 助教 (60457380)
笹田 朋孝 愛媛大学, 上級研究員センター, 上級研究員 (90508764)
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Keywords | 成都平原 / 秦漢 / 製鉄遺跡 / 鉄牛遺跡 / 煉瓦廃棄場 / 煉瓦積み製鉄炉 / 再利用 / 植生変化 |
Research Abstract |
平成21年度は四川大地震のために発掘調査を延期した四川省成都市蒲江県鉄牛遺跡と今年度あらたに着手する砂子堂遺跡を発掘調査した。鉄牛遺跡では、前回の発掘調査で地山に彫り込まれた副産物の廃棄土坑を発見していたが、より広い範囲を調査し、断ち割りを行った結果、地山と見ていた面は地山ではなく、整地面で、その下にいく層もの煉瓦、鉄滓、木炭の堆積層が確認された。その堆積層は地山と同様の黄褐色粘質土で形成された斜面上に形成されているが、その斜面自体も人為的なものである可能性が高く、予想以上に規模の大きい生産址であることがわかった。現段階で最下層出土の土器は前漢代前葉の時期を示し、放射性炭素測定年代もそれに適合した実年代しているが、造成された斜面より下で検出される遺構や遺物は確実のその年代よりも古くなると思われ、秦代、戦国時代まで遡上する可能性が大きくなってきた。発掘に先立って実施した踏査で戦国時代の軟質土器を採集しており、その年代の製鉄関連資料が検出されるとすれば長江流域最古の製鉄遺跡となることは必至である。このほか木炭を良好な状態で採集することができ、燃料木材に関しても周辺の植生に関して重要な所見を得た。 砂子堂遺跡では製鉄炉1基が検出され、現地表面から計測して約1.5mの炉高を残している。煉瓦積みで、俯瞰すると平面形はややいびつな楕円形を呈している。長軸長約1.3m、短軸長約1mを測る。炉内の埋土を除去すると、奥壁から側壁にかけて炉底の一部を確認し、そのレベルから0.5m程度掘り下げると、全面にわたって焼けしまった炉底が検出された。このことによって製鉄炉が2度利用されたものであることが保わかった。これは中国でも初めての確認例となる。 以上のように鉄牛遺跡では長江流域最古級の製鉄に関わる産業廃棄場跡を、砂子堂遺跡では良好な状態の製鉄炉を明らかにすることができた。
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