2010 Fiscal Year Annual Research Report
四川省成都平原蒲江県域における秦漢代製鉄遺跡の調査研究
Project/Area Number |
20401032
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
村上 恭通 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 教授 (40239504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 正治 愛媛大学, 東アジア古代鉄文化研究センター, 助教 (60457380)
笹田 朋孝 愛媛大学, 上級研究員センター, 講師 (90508764)
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Keywords | 秦漢代 / 成都平原 / 製鉄遺跡 / 大型廃棄土坑 / 炉材煉瓦 / 放射性年代測定 / 中国製鉄史 / 鉄牛村遺跡 |
Research Abstract |
四川省蒲江県域における製鉄遺跡のうち、2007年に着手した蒲江県鉄牛村遺跡を継続調査し蒲江県の北に位置する〓〓市鉄屎覇遺跡についても調査を実施した。鉄牛村では、前年度の発掘調査で、製鉄関連残滓の廃棄土坑を確認したが、その全容は不明であった。今年度の発掘調査で、その土坑が7m×6m、深さ2mにおよぶ規模をもち、一方の長辺にスロープを設置していることが判明した。このスロープは土坑内への廃棄を促すための工夫と考えられるが、このスロープ上層のみならず下層にも廃棄物の堆積が認められることから、土坑掘削時の第一次廃棄とスロープ設置後の第二次廃棄という最低2回の廃棄を認めた。出土した炉材煉瓦は、過去の出土例にないような大型品があり、製鉄炉構築の際に使用された煉瓦の多様性を確認することとなった。また今次の発掘調査では大量の土器が出土し、それらの特徴から前漢代中期までこの土坑が遡る可能性がある。土器の時代の検討については、しばらく四川大学考古学専業において検討を継続する。土坑内より出土した木炭の放射性炭素測定年代は紀元前2世紀~紀元前1世紀を示しており、出土土器の時代を検討するうえで重要な情報を提起した。鉄牛村遺跡の大型廃棄土坑は中国の製鉄遺跡において初めての発見例であり、また長江流域で最古の製鉄関連資料を得ることができた。 〓〓市鉄屎覇遺跡は『史記』に登場する卓氏の製鉄史であるという伝説が残る遺跡である。発掘調査の結果、後漢代の製鉄関連資料が検出されたが、遺構の検出はなかった。ただし、宋代の製鉄炉址が発見され、数少ない宋代製鉄資料に新たな例を加えることができた。
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