2010 Fiscal Year Annual Research Report
古代イスラエルにおける一神教の成立過程に関する考古学的研究
Project/Area Number |
20401033
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
杉本 智俊 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (80338243)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
月本 昭男 立教大学, 文学部, 教授 (10147928)
越後屋 朗 同志社大学, 神学部, 教授 (80247791)
牧野 久実 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (90212208)
佐藤 育子 日本女子大学, 文学部, 講師 (80459940)
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Keywords | 考古学 / 聖書学 / 一神教研究 |
Research Abstract |
課題である「古代イスラエルにおける一神教の成立過程に関する考古学的研究」に取り組むため、平成22年度も引き続き、エン・ゲヴ遺跡(イスラエル国)の発掘調査によって出土した遺物の整理をおこなった。また、イスラエル出土の宗教遺物の分析に関しては、研究代表者の杉本が初年度に行った全般的な研究に基づき、「ユダ式柱状土偶」の分析を行った。この土偶はしばしば在地の地母神と同定され、イスラエル王国時代になってからも、ヤハウェの配偶女神として多神教的世界観が継続したことの証拠として議論されることが多い。しかし、本研究では、この土偶は前1200-800年の間ほとんど出土例がなく、これらは前8世紀に新たに導入された信仰を表していること、地母神よりもアッシリアの影響によってもたらされた「天の女王」崇拝と関係する可能性が高いことを示した。このことは、イスラエル成立とほぼ同時に何らかの宗教的変化があり、前8世紀頃に別の展開があったことを示しているのであり、単純に青銅器(カナン)時代の多神教がそのままイスラエルに継続していたのでないことを理解する上で重要である。 また、2011年8月25-26日には、ヤハウェー神教と対立する代表的女神アスタルテを考古学的に理解するための国際カンファレンスを慶應義塾大学にて開催した。これは本来本年度3月に予定されていたものであるが、地震の影響で持越しになったものである。このカンファレンスにおいては、国内外11名の研究者が前3千年紀からヘレニズム時代までこの女神が時代と地域によってどのように変化したかをそれぞれの専門家が議論し、より広い枠組みでこの女神の発展を捉えること、そのコンテキストの中でイスラエルの多神教を埋解することが目的であった。本研究代表者と分担者2名もここで発表を行った。 このカンファレンスの成果は、英文にて出版される予定であり、現在準備中である。
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Research Products
(13 results)