2009 Fiscal Year Annual Research Report
ヴェネズエラの近代・現代建築における自然換気・冷却・保温・採光のシステムと思想
Project/Area Number |
20404016
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松島 史朗 Toyohashi University of Technology, 工学部, 教授 (40422810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助川 たかね 映画専門大学院大学, 映画プロデュース研究科, 教授 (10440421)
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Keywords | コロニアル様式 / パティオ(中庭) / ライトコート(光庭) / ジオ・ポンティ / プランチャート邸 / ラウル・ビジャヌエバ / カラカス中央大学 / 仮想空間可視化装置(CAVE) |
Research Abstract |
平成20年度実施のカラカス市域の建築・都市の現地調査に基づき,21年度は未調査の物件およびより詳細な調査が必要とされた建築について現地調査を行った。更に,調査の際必要と考えられたヴェネズエラの伝統的建築の原型であるスペイン建築,特にコロニアル様式建築についてスペイン領カナリア諸島および都市型住居についてマドリッド近郊アルカラ・デ・エナーレス地域等において現地調査を行った。スペイン本土から約1,000km離れたカナリア諸島はコロンブスが新大陸を目指した際に寄港して以来,移民の中継地点となった場所で,ラ・ラグーナ市の一角は南米のコロニアル建築の原型ともいえる建築や街並みにより世界遺産に認定されている。後者は,更にイスラム様式も加わったスペイン建築の源流とも言える街並みで世界遺産となっており,それらの変遷をたどることで本研究へ貴重な知見を得た。共通して見られるパティオやライトコートおよびエナーレスに見られるピロティ形式のアーケードは,地域性を反映してコロニアル様式に発展し,住宅のみならず公共の建築にも広く展開されている。実際に炎天下の外部よりその空間に入ると,空調設備など不要な清涼感のある空間を体験でき,本研究の主目的である空間構成とその思想の理解にとって重要な体験と事例収集ができた。 また,これまでの調査を通して,伝統的建築に備わった換気や採光システムが,近代建築にも良く継承されている事例が住宅だけでなく,大学などにもみられることが判った。特に,石油収入により高いGNPを誇っていた1950~60時代につくられた建築に特筆すべきものがあり,イタリアの建築家ジオ・ポンティ設計の住宅や,ヴェネズエラの建築家ビジャヌエバによる大学や美術館など,伝統的建築の思想を取り入れた優れた近代建築に現代の建築への大きな示唆と警鐘を発見するという,独自性の高い成果をあげることができた。これらの建築は我が国での認知度は高くはなく,22年度は理論に加えて代表研究者の所有する仮想空間可視化装置等を活用して,誰もが体験可能な空間として再現する等の実質的な研究成果としてまとめることとした。
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[Remarks] 21年度は, 前掲のイタリア人建築家ジオ・ポンティによる住宅を3次元モデル化した。22年度は可視化装置を使って空間を体験できるモデルへと発展させる予定で, 加えてWebページや Google Earth 等多面的な公開を予定している。ヴェネズエラと友好関係にある豊橋市市国際交流協会を通じて現地の日本人会をご紹介いただき, 情報の提供などの協力をいただいている。当地の治安は外務省から警告が出されているように非常に悪く, 特に中心市街地などはガイド付きでも行動は制約され写真撮影などはできない状況にある。22年度は現地大学と連携して, 必要な情報を収集する予定である。