2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヴェネズエラの近代・現代建築における自然換気・冷却・保温・採光のシステムと思想
Project/Area Number |
20404016
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
松島 史朗 豊橋技術科学大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40422810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
助川 たかね 映画専門大学院大学, 映画プロデュース研究科, 教授 (10440421)
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Keywords | 地球温暖化 / パティオ / 自然換気 / 流体解析(CFD) / 総合温冷感指標(PMV) / ヴィラヌエバ / ジオ・ポンティ |
Research Abstract |
カラカス市中および周辺地域の建築,ヴェネズエラ植民地建築のルーツであるスペイン本土,および近隣のオランダ植民地建築について現地調査を実施。上記調査をもとに,建築家カルロス・ラウル・ヴィラヌエバ設計のユネスコ世界遺産でもあるヴェネズエラ中央大学と建築家ジオ・ポンティ設計のプランチャート邸の近代建築を中心に,カラカス市内の都市住宅ならびに伝統的建築の空間構成および温熱環境の実測調査および前2者についてはコンピュータモデルを作成し,流体工学による通風に関する解析を行った。その結果以下のことが明らかになった。 (1)ヴェネズエラの伝統的建築の自然換気・保温・採光システムやその思想が近代・現代建築にも受け継がれていることが明らかになった。(2)昔の建築家が体験を通して知っていたと考えられる,亜熱帯地域の建築における空間の連続性,半屋外空間の多用,圧力差を利用することによる高い通風性を可能にする自然換気システムの効果が,実測とCFD解析により視覚化でき,ある程度検証された。(3)ヴェネズエラ中央大学,プランチャート邸の両建築は規模・機能ともに全く異なるが,パッシブ手法を用いた快適性向上に対する工夫が随所にみられた。前者では,ヴィラヌエバは伝統的な建築構成をそのまま,もしくは再解釈して用いており,後者では、ポンティは伝統的なパティオを忠実に近代建築に取り込んで効果をあげている。(4)古代より用いられてきたパティオ等の熱帯・亜熱帯建築の自然換気システムは,グラナダ等スペイン本土で展開され,植民地政策の中継点であるカナリア諸島を経て南米に移植され,現代へも受け継がれている。一方,近隣のオランダ植民地であるクラサオ島では,オランダ様式の建築が建設されたが,恐らく暑さへの対応が難しく,廃墟と化したものが多く見られ,スペインのコロニアル様式に優位性を見た。(5)本研究の文献・現地調査,空間・温熱環境の評価,モデル作成,CFD解析の一連のプロセスから,現代においても再評価に値する自然と共生する建築の構成要素をある程度明らかにすることができた。それらは,特に夏場を考えた場合の,日本の建築にも応用可能であることが予見された。
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