2011 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ低地フタバガキ林における植物-送粉者ネットワーク構造とその生成要因
Project/Area Number |
20405009
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Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
酒井 章子 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30361306)
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Keywords | ボルネオ / フタバガキ林 / 送粉 / 植物繁殖生態 / 一斉開花 / 動物-植物相互作用 |
Research Abstract |
当該年度の主な研究実績は、以下のようなものである。 1.さまざまな生態系における植物-送粉者相互作用の既存のデータについて、群集ごとに、相互作用相手の種数の均等度を調べた結果、動物と植物の均等度の間に負の相関があることがわかった。わたしたちは、これは、均等度にみられた変異は、送粉サービス及び花資源の需供バランスと関係があると考えている。今後はこの仮説を理論モデルによって検討する必要がある。 2.ショウガ科で、花の形質(形態、報酬、色)と送粉者(クモカリドリ、コシブトハナバチ、コハナバチ)を系統樹上にマッピングし、送粉システムはこれまでに何度も変化していること、変化には一定の制約があること、送粉システムと花の形質の進化が関連して起こっていることを明らかにした。これについては、原稿を完成し、国際誌へ投稿した。現在、査読者のコメントを受けて改定した原稿を最投稿し、判断を待っている状態である。 3.ウダイグサ科について、送粉様式の観察、訪花者の採集・同定を行った。すでに先行研究があるが、より幅広い分類群からサンプルを集めることができた。今後、より詳細な系統樹構築を行い、ショウガ科の場合と同様に、進化経路について分析をおこなう材料を揃えることができた。 4.マレーシア・ボルネオ島のランビル国立公園で、送粉者-植物関係に大きな影響を与える植物の繁殖フェノロジーの調査を継続することができた。また、クレーン等の林冠観測システムを利用しながら、送粉者の標本を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
送粉者と植物の関係についてのメタ解析は、送粉システムの進化について、重要だと思われる仮説の提案に結びついた。この点については、期待以上の成果である。ランビル国立公園の送粉者のデータの取りまとめ、当初ターゲットと考えていたヤシ科などについては、開花頻度が低く、十分なデータを集めることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
送粉サービス及び花資源の需供バランスとネットワーク構造の関係について、理論生態学者の協力を得られたので、モデルを構築し、理論的に検討する。ショウガ科については、解析を終えた論文として投稿した。できるだけ早い受理を目指す。トウダイグサ科について、送粉者の調査、植物、送粉者双方の系統関係の分析をすすめる。送粉者を共有するメリットについて、送粉者を共同で誘引する効果がいわれているが、それに加えて、送粉者の移動を促す効果があるという仮説を得た。これについても、理論的に検討したい。
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