2012 Fiscal Year Annual Research Report
ボルネオ低地フタバガキ林における植物-送粉者ネットワーク構造とその生成要因
Project/Area Number |
20405009
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Research Institute for Humanity and Nature |
Principal Investigator |
酒井 章子 総合地球環境学研究所, 研究部, 准教授 (30361306)
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Project Period (FY) |
2008-04-08 – 2014-03-31
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Keywords | 送粉 / 生物多様性 / 熱帯雨林 / ネットワーク |
Research Abstract |
当該年度の主な研究実績は、以下のようなものである。 1.種子散布と送粉について計52のネットワークのデータセットを収集した。これらのデータセットを解析した結果、熱帯や島嶼部ではジェネラリストとスペシャリストがわかれるが、温帯では比較的どの種も似たような特殊化の程度を示すことが明らかになった。この結果をどのように説明できるのか検討するために、共同研究者とゲーム理論に基づいたモデルを作った。このモデルでは、送粉者が多い環境では植物が送粉者を使い分けて効率よい送粉ネットワークを作ることができるが、不十分な環境では効率の悪いネットワークになるという、送粉者の過多がネットワーク構造に影響するという興味深い結果が得られ、フィールドのデータとも整合性のある結果が得られている、 2.ショウガ科で、花の形質(形態、報酬、色)と送粉者(クモカリドリ、コシブトハナバチ、コハナバチ)を系統樹上にマッピングし、送粉システムはこれまでに何度も変化していること、変化には一定の制約があること、送粉システムと花の形質の進化が関連して起こっていることを明らかにした。これについて、論文を執筆し、American Journal of Botany誌に受理、掲載された。 3.トウダイグサ科について、送粉様式の観察、訪花者の採集・同定を行うとともに、キュー植物園、ライデン大学など、ボルネオの標本が多数収められている標本子を訪れ、花序や花形態の進化を分析するための標本観察を行った。今後、系統樹にもとづいて、進化経路について分析をおこなう材料を揃えることができた。 4.マレーシア・ボルネオ島のランビル国立公園で、送粉者-植物関係に大きな影響を与える植物の繁殖フェノロジーの調査を継続することができた。また、クレーン等の林冠観測システムを利用しながら、送粉者の標本を集めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ショウガ科の送粉システムの進化、トウダイグサ科アカメガシワ属の送粉様式についての論文を発表できた。トウダイグサ科についても、多くの種についてデータを得ることができた。また、群集構造のモデル化を行い、植物-送粉者ネットワークの構造を決める新しい知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、本研究課題の最終年度なので、結果の公表(学会発表および論文執筆・投稿)に力を入れたい。植物-送粉者ネットワークの構造のメタデータと理論モデルを合わせた論文、トウダイグサ科の送粉システムの進化についての論文は、年度中に論文を完成させ、投稿したい。
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