Research Abstract |
2010年9月11日~19日にパプアニューギニア・ニューアイルランド島ケビエン地域で臨地調査を実施した。Paruai,Kableman,Ngavelus,Lossuk,Bagailの各村にサゴヤシを確認した。 Paruai村では無刺タイプ(Moko,Las,Kului,Pupur,KuluiTabusa,Gatu,Wuaf,Tangiの8民俗変種)と有刺タイプ(Galangatの1民俗変種)が確認され,Kableman村ではMinak,Grumbwarau,Nakiyame,Nagwaの4民俗種が確認された。これらの民俗変種のうちMoko,L.as,Kului,Wuaf,Galangat,MinakとNgavelus村の1民俗変種(変種名は不明)の7民俗変種についてDNA分析用の葉身試料を採取した。 Kableman村は西セピック州Nukaから移住してきた人によって作られた村であり,Nuku地域のサゴヤシ名(Minaku,Krumbuwalau,Nakrame)と同じ名前や良く似た名前が見られた。また,Kableman村においてMinakは「背が高い」種として認識されているのに対して,Nuku地域においてMinakは「木のように高くなる」という意味を持つなど,両地域の繋がりを示す情報が得られた。これらの情報はサゴヤシの起源地と考えられるニューギニア島から東への伝播を考える上で重要な知見であり,実際に両地域に生育する変種の遺伝的対応関係を明確にすることでサゴヤシの伝播や種分化が明確になると考えられた。 一方,サゴヤシのデンプン収量を規定する最も重要な形態的要因は幹の直径であることが分かっている。この地域のサゴヤシにおいては,Minakの胸高直径が43.1cm,Galangatが47.2cmと多くのサゴヤシと同程度であるのに対し,Ngavelus村の民俗変種(変種名は不明)では55.8cmと大きく,多収の可能性が窺われた。
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