Research Abstract |
本研究の目的は,NP困難問題と呼ばれる多項式時間で最適な解を求めるためのアルゴリズムを持たないであろうと予想されているグラフ最適化問題を対象に,最適解に対する近似精度を理論的に保証できるアルゴリズムの設計手法を構築することである.また逆に,多項式時間ではより近似精度の高いアルゴリズムを設計することは理論的に不可能であるという近似限界を示すことにより,近似精度の数値的な指標を与えることを目的とする.今年度の主な研究成果は以下である : (1)グラフの最小出次数最大化問題:無向枝重み付きグラフの向き付けを与えることにより,重み付き出次数を定義する.この問題は,グラフ中の最小重み付き出次数を最大化する問題である.本研究課題の成果は,枝重みを{1,2}に限定し,かつ各頂点の(重み無し)次数が高々3,さらにグラフが平面二部であるような場合でも強NP困難であり,P=NPでない限り,任意の定数ε>0に対して多項式時間では2-ε近似不可能であることを示した.すべての枝重みが1である場合,入力グラフがカクタスである場合には多項式時間で動作するアルゴリズムが存在することを示した.(2)直径d部分グラフ最大化問題:グラフGと整数d≧1に対して,直径がdである最大部分グラフをG中から見つける問題である.d=1の場合は最大クリークと同一の問題であり,その一般化と考えられる.本研究課題では,d≧2に対して,n^<1/2-ε>の近似限界が存在することを示した.また,dが偶数の場合にはn^<1/2>近似アルゴリズム,dが奇数の場合にはn^<1/3>近似アルゴリズムが存在することを示した.さらに,弦グラフ,スプリットグラフ,区間グラフ,k部グラフといった制限された入力に対する近似上界と近似下界を示した.
|