2008 Fiscal Year Annual Research Report
嗅覚受容体遺伝子の単一発現制御と嗅神経回路形成の分子機構
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20500280
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西住 裕文 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 助教 (30292832)
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Keywords | 嗅覚受容体 / 遺伝子発現 / 神経回路形成 / 軸索投射 / マウス |
Research Abstract |
マウス嗅覚系において、匂い分子を受容する嗅覚受容体(odorantreceptor:OR)は1400種類以上存在するが、個々の嗅神経細胞ではそのうちの一種類のみを、相互排他的かつmono-allelicに発現している。嗅神経細胞はどのORが発現するかによってその神経個性が規定され、軸索を嗅球上のどこに投射し糸球体構造を形成すれば良いかが決定される仕組みになっており、OR遺伝子の発現制御を明らかにすることは、単に遺伝子の活性化機構を理解するに止まらず、嗅神経回路形成の理解にも重要である。本研究では、OR遺伝子を一つ選択して活性化するlocus control regionによる正の制御と、発現したOR分子が残りのOR遺伝子め新たな活性化を阻止する負のフィードバック制御の両面から研究を進め、OR遺伝子の単一発現が保障される機構の解明を目指す。 a)マウスH領域内シスエレメンドに結合する転写因子の単離 酵母one hybrid法を用いて、嗅上皮由来のcDNAライブラリーをスクリーニングした結果、ホメオドメイン転写因子であるLhx2、Barx1、D1x3、D1x5、Emx2が単離された。これらの因子は、異なった結合強度で、コアH配列内に存在する2箇所のホメオドメイン結合配列に会合する事が、コアH配列への変異導入実験から明らかとなった。 b)OR遺伝子の負の発現制御の実体解明 一旦機能的なORタンパク質が発現すると、負のフィードバソクシグナルにより、他のOR遺伝子の発現が抑えられる機構が存在すると考えられている。負のフィードバックシグナルがβ-Arrestinを介したものと想定し、β-Arrestinシグナルを抑えた場合に、OR遺伝子の発現に与える影響を解析した。OR遺伝子のプロモーターの制御下で、野生型β2AR、あるいはβ-Arrestinシグナルのみ抑制される変異型β2ARを発現するトランスジェニックマウスを作製した。その結果、野生型β2ARを発現させた場合には、OR分子と同様に振る舞い、内在性のOR遺伝子は全く共発現していない。一方、変異型β2ARを発現させた場合には、様々な内在性のOR遺伝子が共発現し、嗅細胞の軸索投射も乱れていた。今後β-Arrestinのknockoutマウスを作成し、この分子の関与を検証する。
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