2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20500312
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
船越 健悟 Yokohama City University, 医学研究科, 教授 (60291572)
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Keywords | 神経再生 / 自律神経系 |
Research Abstract |
哺乳類の中枢神経系では、傷害された軸索はわずかな再生能しか示さないとされているのに対し、キンギョでは傷害後しばらくすると自然に軸索が再生し、運動機能が回復する。20年度は、キンギョ脊髄損傷によって生じた瘢痕組織を再生軸索がどのように通過するのか、その過程を詳細に検討し、以下の知見を得た。(1)脊髄を傷害したのち、損傷部には中央に空洞を伴う線維性瘢痕が形成され、瘢痕はラミニンを発現している基底膜に取り囲まれていた。(2)損傷後3週で、線維性瘢痕の内部に基底膜がチューブ状に侵入し、基底膜に沿ってセロトニン細胞が配列していた。また、チューブの内側にはグリア線維と再生軸索が含まれていた。(3)損傷後6週で、チューブ状構造は線維性瘢痕を貫通し、同時に再生軸索も瘢痕部位を通過していた。(4)また、線維性瘢痕とグリア組織にはコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現が確認されたが、再生軸索はそれら軸索伸長阻害因子の発現部位を乗り越えて伸長していた。以上のことから、キンギョの脊髄損傷後には哺乳類と同様に線維性瘢痕が形成されるものの、徐々に神経組織に置換されてゆき、再生軸索の多くはそうしたグリア線維でみたされた神経組織内を通過しているものと結論付けられる。また、グリア細胞は哺乳類で見られるようなグリオーシスを示さず、軸索伸長阻害因子を発現するものの、その働きは再生軸索によって容易に克服うるものであることも示された。このような瘢痕組織そのものの性質に違いや時間経過に伴う変化が、哺乳類と異なってキンギョの軸索再生を可能にしている可能性があると考えられる。ここで観察した再生軸索は主に体性運動系に関わるものであるため、中枢自律神経下行路についても同様な検討を行っている。
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