2010 Fiscal Year Annual Research Report
身体運動知覚の誤差修正メカニズムの解明:感覚運動表象の学習効果の検証
Project/Area Number |
20500503
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
田中 秀幸 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (70231412)
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Keywords | 知覚 / 運動制御 / 行動学 / 脳・神経 / 学習 |
Research Abstract |
平成20~21年度に実施した実験において,正確な動作の繰り返し練習が身体運動知覚の正確性を向上させることが明らかとなった.しかしながら,との身体運動知覚の正確性の変化に対して,どのような感覚情報がどの程度寄与するかは依然として不明であった.そこで平成22年度は,主動筋と拮抗筋の腱筋紡錘由来の求心性感覚情報に着目し,能動的運動時と受動的運動時における身体運動知覚の正確性を比較した.被験者はアルミ製回転アーム(ロボットアーム)に前腕を載せ,肘の屈曲位70度からの単関節伸展運動を行った.実験課題は,肘伸展運動中にスクリーン上に提示された視覚刺激と,刺激提示の瞬間に実際に感じた手の位置を比較することであった(能動運動条件).反応データに心理物理関数を適用し,随意運動中の手の位置判断精度を推定した.受動運動条件においては,ロボットアームをモータ駆動し,腕を受動的に伸展させ,能動運動条件同様に位置判断精度の推定値を得た.能動条件と受動条件間で位置判断精度に統計的有意差は認められなかった.位置決め課題から得られた静的位置判断誤差と比べた時,これら2つの動的位置判断誤差は,予想されたよりも小さかった.これらの結果は,上肢運動の空間的知覚においては,上位中枢からの遠心性情報(運動命令の遠心性コピー)よりも随意運動によって伸張される筋(拮抗筋)や腱からの求心性情報が重要な役割を担うことを示唆する.さらには,運動する上肢の直接的視覚情報が得られなくても,参照枠さえ与えられれば,固有受容感覚由来の位置情報は視覚空間内の位置情報へ正確に変換されることが明らかとなった.
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