2010 Fiscal Year Annual Research Report
合気道の形成過程に関する研究:海軍大将竹下勇関係文書を中心に
Project/Area Number |
20500530
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
志々田 文明 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 教授 (80196378)
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Keywords | 健康スポーツ科学 / 身体教育学 / 武道論 / 身体運動文化論 / スポーツ科学 / スポーツ史 / 合気道 / 竹下勇日記 |
Research Abstract |
平成22年度の研究目的に即した研究実績の概要は以下の通りである。 (1)海軍大将竹下勇日記の武道関係箇所全部の解読と文字入力する作業の完結については、大正15年から昭和24年の末までの期間についてほぼ完了した。また専門家(書家)による難字の判読を計画に従って行った結果、若干の判読不明な活字がなお残されたものの、多くの難字が読解された。これによって全体のテキストはほぼ確定された。またこの史料の一部は研究代表者のHPで公開した。 (2)上記作業の研究成果を背景に早稲田大学スポーツ科学研究科大学院生工藤龍太と共同で執筆した研究論文「合気道における合気の意味:植芝盛平とその弟子たちの言説を中心に」は、合気道の基本概念である名辞合気が曖昧に使用されている実態を受けて、合気の意味の明確化に取り組んだものである。竹下勇日記には、「大東流合気柔道」「合気柔術」 「相生流合気柔術」「合気武術」「合気武道」「合気兵法」「合気護身術」など合気にかかわる用語が登場する。竹下勇日記の全体とこれらの名辞が使用される文脈の理解から、合気という言葉が武術の技法を指した用語であることを明らかにした。 (3)これらの研究成果は、英国合気道協会、欧州富木合気道ネットワーク、そしてカソリック・ルーベン大学の協力を得てイギリス、ベルギー、オランダ、チェコにおける公開講演「近代における柔術、柔道、合気道の展開」及びセミナーによって明らかにされた。そこでは特に、竹下勇日記に柔道創始者嘉納治五郎が登場することの意味を、両者の技法問題への関心と関連づけながら説明し、両者の関心が柔術という護身術の性格をもつ技法にあったこと紹介した。以上によって今回の基礎研究が武道史の新たな知見を導くことが理解された。
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Research Products
(4 results)