2008 Fiscal Year Annual Research Report
スタジアムにおける空間管理とファンのネットワーク形成に関する研究
Project/Area Number |
20500545
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
高橋 豪仁 Nara University of Education, 教育学部, 教授 (40206834)
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Keywords | スポーツ / ファン / スタジアム / 管理空間 |
Research Abstract |
広島東洋カープのホームゲームにおける観客の逸脱行為について文献調査したところ、広島市民球場に私設応援団の連合組織ができた1977年からは、観客の起こす騒動が少なくなっており、特に観客が暴徒化することがなくなったことが分かった。このことから、私設応援団による組織的な応援が、観客の逸脱的な行動を抑制していることが示唆される。スタジアムにおける集合的応援は、私設応援団が多数の観客を統制することによって可能となっており、集合的応援に参加する観客は、その統制の中で興奮していると言える。大衆としての観客が、ファンの中からボランタリーに形成された私設応援団による統制に自ら従うことによってスタジアムの秩序が保たれているという側面があることが推察される。 1980年代に一般化したプロ野球の集合的応援行動に対して、コミッショナーは1984年に応援倫理三則を発表し、鳴り物や旗を使った応援を規制しようとしたが、一旦一般化した集合的応援は衰退することなく、また集客の観点からも応援倫理三則は徹底されることはなかった。2000年以降、私設応援団にまつわるトラブルに暴力団との繋がりが指摘され、日本野球機構は警察庁と連携して、2003年に「プロ野球暴力団等排除対策協議会」を立ち上げ、2006年からは私設応援団を許可制とした。私設応援団「神戸中央会」の参与観察から、応援団員は応援許可が与えられることを誇りに思っており、京セラドームの警備に携わる警備会社の職員や甲子園球場の職員へのインタビューから、私設応援団が管理されていることが分かった。球団や球場が黙認あるいは疎んじていた私設応援団に対して日本野球機構が正式に市民権を与えるというこの一連の動きは、私設応援団が囲い込まれる過程として捉えることができる。
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