2010 Fiscal Year Annual Research Report
スタジアムにおける空間管理とファンのネットワーク形成に関する研究
Project/Area Number |
20500545
|
Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
高橋 豪仁 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (40206834)
|
Keywords | スポーツ / ファン / スタジアム / 管理空間 |
Research Abstract |
本年度も、プロ野球の私設応援団・後援会の参与観察を継続した。1975年に設立されたK後援会は、シーズンオフに開催するパーティに毎年欠かさず球団を通じて選手を招待していたが、2010年は球団から選手の派遣を断られた。また、この球団にはおよそ30近い私設応援団が存在しており、2006年から特別応援許可証が交付されていたが、2011年度の審査において1つの応援団に対して応援団方式の応援の不許可と球場等への立ち入りの禁止が通知された。 プロ野球12球団と日本野球機構(NPB)に対して、スタジアムにおける安全管理や特別応援許可規程に関する質問紙調査を郵送法で実施した。督促の葉書を出したにも拘わらず、回答は1球団のみであった。後にこの回答のあった球団の事務所に行き、担当者に話を聞くことができたが、応援が許可されている私設応援団は5つしかなく、球団との関係も良好であるとのことだった。また、ある球団から現在裁判中の為、アンケートには回答できないとの連絡があった。この裁判は、D球団の私設応援団のメンバーが球場入場や応援団方式の応援を禁止したNPBと12球団に無効を求めた控訴審であり、名古屋高裁で裁判が行われていた。平成23年2月17日の判決当日に、裁判所に赴き、私設応援団関係者に対して聞き取り調査を行った。応援団方式の応援の申請を不許可としたことは、第一審同様、第二審でも違法ではないと判決された。当該の応援団員の球場への入場禁止については、第一審ではプロ野球主催球団やNPBの権利の濫用として違法であるとされたが、今回の第二審では、裁量権の範囲内であり違法とはいえないとの判決となった。 プロ野球は文化的公共財であるという理念がある一方で、入場者の制限や応援団方式の応援の許可において興行主の裁量が優先される傾向にあることが明らかとなった。
|