2009 Fiscal Year Annual Research Report
炭酸水による血管拡張作用および温熱作用の機序解明-スポーツ科学への応用-
Project/Area Number |
20500586
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
西村 直記 Aichi Medical University, 医学部, 講師 (40278362)
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Keywords | 高濃度人工炭酸泉 / 睡眠深度 / 深部体温 / 心拍変動 / 疲労回復 |
Research Abstract |
高濃度人工炭酸泉は血管拡張効果を有することから、高血圧症者や末梢循環障害を有する患者に対しての温泉療法として用いられている。また、「疲れが取れやすい」、「ぐっすり眠れる」などの主観評価があることから、アスリートに対しても適用されている。しかしながら、これらはあくまで主観的な感想のみであり、炭酸泉への浸漬が睡眠効率を上げる生理学的根拠については明らかになっていない。今年度は、就寝前の炭酸泉への浸漬が、睡眠深度および睡眠評価に及ぼす生理学的効果を明らかにするために、さら湯への入浴と比較・検討した。 健康な男子大学生6名を被験者とした。湯温39℃に設定した高濃度人工炭酸泉(1000ppm)へ10分間の全身浴を行わせた後、人工気候室内(室温24℃、湿度50%)にて午後11時~午前6時まで睡眠を行わせた。睡眠中の心電図、脳波、深部温、皮膚血流量の測定と、起床直後の気分評価(VAS)の聞き取りを行った。対照実験として、同じ条件下でのさら湯浴を行った。 直腸温(深部体温)および前頭部皮膚温は、炭酸泉浴後およびさら湯浴後ともに睡眠初期に大きく低下したが、それは炭酸泉浴後でやや大きいことから、炭酸泉浴後では発汗や皮膚血管拡張による熱放散の促進がさら湯浴後よりも大きいと考えられた。迷走神経活動の指標である心拍変動のHF成分は、心拍数は、炭酸泉浴後がさら湯浴後よりも大きく、炭酸泉浴後でのリラックス感が高いことが明らかとなった。また、入眠潜時は、炭酸泉浴後がさら湯浴後よりも早い傾向にあり、深い睡眠深度が得られる(睡眠ステージ3と4の増加)という結果であった。加えて、自己申告による中途覚醒数も炭酸泉浴の方が少なかった。 以上の結果から、炭酸泉入浴後の睡眠は、さら湯浴後と比較して入眠時の深部体温の低下を促進させると共に、迷走神経活動を上昇させることで、より深い睡眠が得られることが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)