Research Abstract |
人が被服を着用した時に発生する被服圧の内,人体を被服で締め上げた時に発生する周応力は,ややもすると人体に負の影響を与える.体のどの部位をどれ程の強さで加圧すると,人体に負の影響を与え得るのか,圧の適正範囲を人体の体部位全体を網羅して明らかにすることが重要である.またフィールドでの使用に適した,誰もが手軽に被服圧を測定できる簡易被服圧測定器を開発しており,ほぼ完成の域に近づいた.しかし大学との特許権等の問題が煩わしく,発表にまで至っていない.人体の体部位全体を網羅する圧の適正範囲を明らかにするために,(1)特に周応力が発生する着装部位(頭部,頸部,胸囲,腹囲,臀囲,鼠蹊部・大腿・下腿・膝・足首・肩・上腕・前腕・肘・手首・指の計20周囲)を,幅2.5cmのインサイドベルトと,ゴムベルトを用いて圧迫した.すると,周応力に鋭敏な部位とそうでない部位があることが明らかとなり,若年女性の圧のマッピングが完成した.なお,胸部から腹部にかけての圧の許容限界のマッピングも明らかにした.(2)超音波診断装置を用いて,皮下脂肪・筋の厚さの変化を腹部と脚部を詳細に調べたところ,皮下組織は,時刻や月経周期の位相によつてそれ程変化しなかった.(3)人体に負の影響を及ぼす周応力について人はあまり自覚していない.昨年は圧迫刺激によらない皮膚温の変化に影響を与える諸因子について明らかにした.これを踏まえて圧迫刺激の強さの変化に伴う血流(超音波ドップラー法使用),皮膚温の変化を調べたところ,血流量では"きつい"と感じる腹部へのわずか2分間の圧迫刺激であっても,尺骨動脈の血流量は有意に減少し,皮膚温が低下することがわかった.これにより人体が気づかぬ内に受けているダメージの圧の限界を明らかにする指標となることがわかった.以上の結果を踏まえて,パーマンスを向上させる加圧すべき体部位と強さを選定し,被服への応用(着圧ハイソックス)を試みた.
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