2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代庶民住生活像・インテリア像の形成と英国田園都市住宅思想の影響
Project/Area Number |
20500679
|
Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
黒石 いずみ Aoyama Gakuin University, 総合文化政策学部, 教授 (70341881)
|
Keywords | 住生活 / インテリア / 建築史・意匠 / 社会学 / 思想史 |
Research Abstract |
研究計画で予定した通り、第一年度は英国の田園都市住宅思想の一次資料収集に主眼を置いて調査研究を行った。Studio, Builder, Architectural Review, RIBA Journal, Building Newsの19世紀後半から1920年代にいたるまでの記事を英国の諸図書館で通覧し、中流階級住宅と農村・都市の庶民住宅のデザインや計画に関する議論、建築家とインテリアデザイナーの専門性、住宅デザイン市場の歴史的変化を全体的に把握した。またV&A博物館、レッチワース田園都市博物館、ハムステッド博物館、ロンドンメトロポリタン博物館において、田園都市住宅設計事例の詳細資料、同時代の新聞記事、設計者に関する資料、デザインマニュアル、さらに現在に至るまでの関連既往研究を収集し分析した。大英図書館では19世紀末から大戦期にかけての生活近代化運動の特にジェンダー論的側面に注目し、インテリア概念の発達との関係を研究した。3月には連携研究者である内田、藤谷と共に、英国の近代住宅デザインの先駆者であるヴォイジーの作品を訪問し見学した。幸運にも3軒の個人所有の住宅で内部空間を体験することが出来、資料を収集すると共にインタビューを行った。上記の資料は多くが日本に紹介されていない英国の田園都市住宅計画とデザインの一次資料であり、都市建築の社会背景資料を多く含む貴重なものである。社会的側面を重視した近代住宅思想研究の必須資料として、今後広く活用されるように整理していきたい。本年度の資料収集や見学旅行で、20世紀初頭1の英国田園都市住宅思想の日本への影響を考える際には、我々の現代的な視点に立った合理性や近代美、社会規範の基準の歴史性を自覚し、19世紀後半の「近代」概念の多様性の問題に注意すべきであること、また19世紀英国での日本文化の解釈とデザイン的展開という相互影響的な関係も考慮すべきであることが理解できたのは、本研究の理論的枠組みを築く上で重要な進歩であった。
|
Research Products
(7 results)