2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本近代庶民住生活像・インテリア像の形成と英国田園都市住宅思想の影響
Project/Area Number |
20500679
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
黒石 いずみ Aoyama Gakuin University, 総合文化政策学部, 教授 (70341881)
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Keywords | 住生活 / インテリア / 建築史・意匠 / 社会学 / 思想史 |
Research Abstract |
本年度は、当初研究計画に従って、ます英国で収集した田園都市の住生活に関する思想について、文献と作品資料の整理を行った。19世紀末から20世紀初頭のメディアの影響、消費生活のインテリアデザインにおける表れ、また大戦期に向けての世論の動向と住宅政策の変化を把握した。 第二に、武田五一など日本国内の20世紀初頭の代表的な近代住宅作品、住宅地開発を見学し、各事例の資料を社会情勢との関係やインテリアに主眼を置いた視点から収集した。 第三に、「住宅」など20世紀初頭の婦人雑誌を中心として、メディアの動向と庶民住宅に関する一般の人々の住宅思想の変化を読み解く事を行った。 第四に、住宅政策の20世紀初頭の展開について、既往研究の検証を行うと同時に、内務省の都市と農村の住宅改善事業の全体像を確認し、代表的な計画地の見学と資料収集を行った。その中には満州の植民地における実験的な住宅地開発の事例も含まれる。 第五に、大正・昭和初期の文学と映画の領域において、住空間がどのように描写されていたか、また「文化映画」などの分野で、庶民の住宅空間を題材として日本文化論と欧米の近代的な芸術論や都市・建築空間の理念がどのように解釈され表現されていたかを検証した。 以上の研究と調査で、日本の近代住宅改善事業の社会思想的・理論的背景の基礎的情報を整理する事が出来た。また実際の作品の地域的な状況、メディアの論説の形成過程、住政策の国際的な情報と実際の施策の間の矛盾、表現芸術における住空間への関心の方向性について知ることができた。 各調査と研究の関心領域が多岐にわたり、一般的な住居論研究や建築史研究と異なっているので、今後のためにも、これらの成果を統合する理論的な体系を早急に整理する必要、さらに具体的な事例資料を集める必要を強く感じると共に、これまで明らかでなかった細かな事柄の重要性を実感し、研究の目的や方向性のポテンシャルを確認する事が出来た。
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Research Products
(5 results)