2008 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール摂取による脂溶性栄養素の代謝への影響とその作用機序に関する研究
Project/Area Number |
20500716
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
駿河 和仁 University of Nagasaki, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
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Keywords | アルコール / 脂溶性栄養素 / ビタミンA / β-カロテン / 脂肪肝 / マイクロソームトリグリセリド輸送タンパク質 |
Research Abstract |
1.アルコール摂取によるビタミンAおよびβ-カロテン吸収・代謝に及ぼす栄養:エタノールを5%含む液体飼料を4週間摂取したラットでは、β-カロテン(以下BC)からビタミンAへの転換酵素であるβ-カロテン中央開裂酵素(β-カロテン15,15'-モノオキシゲナーゼ、以下BCMO1)の遺伝子発現量および酵素活性が小腸において有意に低下することが確認された。48時間のBCの出納実験の結果、腸管のBC吸収率は両群間で有意な差は見られなかったものの、血清のBC濃度、肺および精巣のBC量はエタノール摂取群で高値を示し、肝臓のBC量は低値を示した。一方、血清レチノール濃度はエタノール摂取群で増大する傾向を示し、肺の総レチノール量も有意に高値を示したが、肝臓の総レチノール量は有意に低値を示した。これらの結果より、慢性的なアルコール摂取下では、小腸におけるBCのビタミンAへの転換効率が低下し、BCはそのままの形で吸収され、さらに小腸のBCMO1の低下は、肝ビタミンA量の低下に関連していることが示唆された。また慢性的なアルコール摂取下では、吸収されたBCはビタミンAと同様に肝臓において貯蔵されにくく、肺や精巣などの肝臓以外の組織に移行するものと考えられた。 2.慢性アルコール摂取による、脂肪肝発症の機序に関する研究:4週間のエタノール摂取によりラット肝臓のMTP mRNA発現量は低下し、トリグリセリド量は有意に増加した。さらにラットMTP遺伝子5'-flanking領域の転写活性を測定した結果、アルコールおよびアセトアルデヒドを添加することで転写活性は低下した。これらの結果より、エタノールやアセトアルデヒドがMTPプロモーターに存在するMTP遺伝子の転写活性に関わる転写応答領域に作用し、MTP遺伝子の転写活性を低下させると推察された。現在その応答配列およびそれに作用する転写因子について検討を行っている。
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