2010 Fiscal Year Annual Research Report
アルコール摂取による脂溶性栄養素の代謝への影響とその作用機序に関する研究
Project/Area Number |
20500716
|
Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
駿河 和仁 長崎県立大学, 看護栄養学部, 准教授 (70315852)
|
Keywords | アルコール / ベータカロテン / ビタミンA / 中佐脂肪酸 / 肝障害 |
Research Abstract |
1. アルコール摂取によるビタミンAおよび-カロテン吸収・代謝関連遺伝子の発現変動の制御メカニズムに関する研究:本研究では、エタノール摂取による小腸β-カロテンモノオキシゲナーゼ1(BCMO1)遺伝子の発現抑制のメカニズムについて検討するためにヒトBCMO1遺伝子を内因的に発現するヒト小腸様細胞株Caco-2BBe細胞を用いた。 Caco-2BBe細胞をエタノールやその代謝物であるアセトアルデヒドを添加した培地で培養したが、BCMO1 mRNA量の変動は見られなかった。さらに、慢性エタノール投与により血中内濃度の増大するエンドトキシン(LPS)や炎症性サイトカイン(TNFα, IL1β)を培地に添加したところ、IL-1βやLPSの添加ではBCMO 1 mRNA量は変動しなかったが、TNFαの添加では、むしろBCMO 1 mRNA量は増大した。 2. アルコールによる脂溶性栄養素の吸収・代謝変動に対する食餌性脂肪の影響:本研究では、アルコールによる肝障害抑制作用や小腸の粘膜機能障害の抑制効果が報告されている中鎖脂肪(MCT)の摂取がアルコール慢性摂取による脂質代謝やビタミンAやβ-カロテンの吸収・代謝の変動に対する影響について検討した。その結果、MCT摂取によるアルコール性肝障害(トリグリセリドの蓄積やTNFα mRNA量の増大、ALT・ASTの増大など)に対し抑制効果が認められたが、慢性アルコール摂取による小腸のβ-カロテン吸収・代謝関連遺伝子発現量(BCMO1、SR-BI mRNA量)の減少や肝臓のビタミンA(レチノール)貯蔵量の減少に対してはMCT摂取による抑制効果は見られなかった。一方、慢性アルコール摂取による肝臓のレチノイン酸の異化亢進(CYP26A1 mRNA量の増大)の可能性が認められた。このことは、多数の遺伝子発現制御に関連しているレチノイン酸量が慢性アルコール摂取により減少し、様々な障害を引き起こすことに関連するものと考えられるが、MCTはアルコール摂取によるCYP26A1 mRNA量の増大を抑制したことから、アルコール摂取によるレチノイン酸の異化を抑制する可能性が示唆された。
|