Research Abstract |
現在,「教育の質」の保証が重要な課題とされ,大学教員が自らの教育内容や方法を振り返り,改善のため組織的な研究や研修を行うことが求められている.しかし,高等教育では,初等・中等教育のように特定の時間に複数の教員を確保して,授業観察などを行うことは難しい.そこで,授業観察者が,授業風景の収録を行いながら,その授業についてのコメントを記録できるシステムを開発して効率的な授業ピアレビューを行う体制を整えた.分野を超えた教師連携を可能とするための評価指標の抽出,および授業改善のための「eポートフォリオ」のためのシステム構築にむけた開発をすすめた.そのためには,本システムを利用した授業観察プロジェクトへの参加者を募るとともに,利用者からの意見を取り入れたシステム改良を行っていった.2008年4月から2010年3月まで,5名の教員と3名のTAが交替で授業観察を行ってきた.この授業観察の分析を行い,分野の異なる教員同士でも連携の在り方、授業研究の進め方について検討した.その結果,授業ピアレビューでは,教育改善を担当する教員と専門の近い教員がペアとなり,同じ授業を,複数回にわたって観察し,継続的な改善支援を行っている.このシステムを利用して,2010年度は,英語で行う授業改善のためのFD支援のために利用した.さらに,2008年から2009年まで8回にわたりその結果,(1)観察者のコメントは,全般的に行動の記録が多く処方的コメントは少なかった,(2)教授スキルに関するコメントは,同一授業の中で繰り返し指摘される場合が多かった,(3)声の大きさや板書方法などの教授スキルは改善され,否定的なコメントが減少した,の3点が明らかになった.
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