2008 Fiscal Year Annual Research Report
戦前期日本における自然保護思想・運動の科学史的・社会史的研究
Project/Area Number |
20500877
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
篠田 真理子 Keisen University, 人間社会学部, 准教授 (80409812)
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Keywords | 戦前期 / 自然保護 / 台湾 / 植民地 / 天然記念物 / 石碑 / ナショナリズム / 国家公園 |
Research Abstract |
本年度は、文献調査および、台湾における現地調査を中心に研究を進めた。(1)北投温泉(2)石門(北部海岸)(3)墾丁の森林植生(4)恒春の出火(天然ガスの自然発火)を選定し、現地調査を行った。また國立中央圖書館臺灣分館で文献調査を行い、資料を収集した。 (1)北投温泉は日本統治時代に形成された温泉地で、放射能を持北投石が発見された場所としても知られる。戦前に天然記念物に指定されたが、現在は「自然文化景観」と名称を変えて保存地区とされている。北投石の発見者である岡本要八郎(台湾総督府技手)の碑が現在も北投地区に残存していることが分かった。(2)北部海岸に存在する石門は特異な天然景観として日本統治下で天然記念物に指定された。現在台湾では天然記念物を保存する制度は存在しないが、現地に天然記念物であることを示す石碑が建立されていることが分かった。(3)台湾最南端である墾丁の森林植生は、際立った熱帯植生がみられることにより日本統治下に天然保存地域として指定された。現在は「墾丁森林遊楽区」と名称を変えて痕跡を残しており、一帯は国家公園(日本の国立公園に該当)に指定されている。(4)地表でガスが引火して燃え続ける景観は現在「出火特別景観区」として保存の対象となっている。このように、戦前の天然記念物は、制度や名称を変えつつも現在もその痕跡をとどめている。台湾の国家公園は日本の国立公園制度の影響を受けて形成されたとされているが、天然記念物に関しても現在まで影響が残っていることが明らかになった。植民地台湾において戦前期に展開された自然保護制度の影響を、日本国内のそれと比較することが可能であると判明したことが、今年度の調査の意義である。台湾における天然記念物制度を、日本側(総督府および科学者)の視点と台湾側の視点の双方から考察するために今後は現地における聞き取り調査を中心に研究を深める必要がある。
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