2010 Fiscal Year Annual Research Report
ため池卓越地域におけるハザードマップ作成に関する研究
Project/Area Number |
20500894
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
内田 和子 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 教授 (00223553)
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Keywords | ため池 / ハザードマップ / 被災体験 / 住民と行政の連携 / 地域性 |
Research Abstract |
ため池のハザードマップ作成方法には、工学的手法や地理学的手法、当該地域の住民が自ら作成する手法等がある。工学的手法のうち、代表的なマップ作成ソフトである独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構農村工学研究所のソフトを用いて、岡山市備前市長谷下池のハザードマップを作成し、同時に、2003年8月に同池が決壊した際の洪水状況図を現地調査により作成して、両図を比較、分析した。その結果、前者のソフトによるハザードマップは浸水の実情とは異なる点があり、それを修正するためには、地形的要素や大きな人口構造物による影響をより詳細に加味して分析する必要があることがわかった。しかし、このソフトは簡便で安価なハザードマップ作成手法として一定以上の評価ができるもので、予算や人的労力をかけられない場合には効果的な手法と言える。同時に、研究代表者が、主として地形的要素をもとに作成しようとする地理学的手法は、決壊による浸水の実態にはよく適合する。一方で、多くの時間と専門的知識を要するという短所もあると言える。 また、ため池ハザードマップを地元住民と行政が連携して作成する場合に、住民の被災体験が重要である。このことを京都府亀岡市柏原地区の住民が、かつてのため池決壊による被災状況を記した被災地図(1種のハザードマップといえる)を残し、被災体験を文章化したり話したりして次世代に継承し、他地域の住民にも啓蒙している事例を分析して、被災体験継承の重要性を指摘した。 次に、住民と行政の連携によるハザードマップ作成の先進事例と思われる、和歌山県海南市と愛知県の現地調査を行い、こうしたハザードマップ作成のあり方や具体的な作成マニュアルについても分析・考察した。その結果から、この方式によるハザードマップ作成には、当該地域の地域性を考慮した手法の工夫が必要と言える。
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Research Products
(3 results)