2010 Fiscal Year Annual Research Report
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20500900
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
森永 由紀 明治大学, 商学部, 教授 (20200438)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (00315392)
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Keywords | 遊牧 / 生態 / 持続可能性 / モンゴル / 気象 / 伝統的技術 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
遊牧に関する伝統的知識(遊牧知)の科学的検証を目的に、モンゴル国北部の森林草原地帯にあるボルガン県にて遊牧の気象学的・生態学的調査を実施し、主に二つの知見が得られた。(1)牧民が「冬場はより暖かい場所を選んでゲルを設営する」という土地利用に関する遊牧知を検証するために、優秀な牧民として表彰された経験もあるチョローン氏がゲルを設営する冬営地と夏営地の気象条件の違いを、両地点における気温の連続観測のデータから明らかにした。冬営地と夏営地の気温と最大瞬間風速の2冬季間(2008/09年2009/10年の11月3日一3月7日)の1時間値の散布図にy=0.4x+12.3というモンゴル国の牧畜気象学の成果である気温・風速と採食行動の関係図から読み取った近似式を重ねると(この線よりも上側ではヒツジは寒さと強風のために草地で採食が不可能になるとされる)、冬季中にこの基準を越えた厳しい条件が観測されたのは、2009年冬と2008年冬の夏営地で50.7%と30.8%、冬営地でそれぞれ29.3%と20.8%だった。両年とも冬は冬営地が夏営地より過ごしやすいこと、2冬では、記録的な寒雪害(ゾド)となった2009年今冬の気象条件が冬営地でも夏営地でも厳しかったことが明らかになった。 (2)よい草と水を求めて家畜を移動させることが栄養状態にとって有利、という遊牧知の検証を目的に、ヒツジとヤギの移動群と定住群について、家畜の体重の季節変化の比較を行った。すべて識別された個体について2006年5月から2007年12月まで毎月末に体重を測定した。ヤギに関する結果は、群れの体重はスタート時点の2006年6月で移動群(26.1kg)のほうが定着群(30.0kg)よりも有意に軽かった(P=0.007)。その後7月から有意な違いはなくなり(P>0.05)、増体しながら定着群では10月に、移動群では12月に其々最大値をとった。注目されるのは12月には定着群(39.5kg)より移動群(422kg)のほうが有意に重くなったことで、(P=0.04).その後は常に移動群のほうが有意に重くなった(P<0.05)。
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Research Products
(13 results)