2011 Fiscal Year Annual Research Report
樹状突起における情報統合を考慮した海馬体の記憶認知機能の実証的理論研究
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20509001
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 敏明 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (10391898)
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Keywords | 海馬システム / 記憶認知システム / 確率的時系列解析 / メキシカンハット型相互作用 / 連想記憶モデル / 情報統計力学 / 非線形動力学 / 顔認知システム |
Research Abstract |
本研究課題の4年度目に当たる本年度は,海馬体における記憶認知機能の実証的理論研究を遂行するための理論研究を遂行した.まず,海馬において観測されている空間認知機能を実現する細胞群であるグリッド細胞,場所細胞,方向細胞を再現する数理モデルとして知られているSlow Feature Analysisの確率モデルに注目した理論研究を行った.本研究課題では,確率的Slow Feature Analysisに対して確率伝搬法を適用することにより,雑音が重畳された場合でも,Slow Featureに関する情報を抽出できる新たな数理モデルを構築することに成功した.数値実験データを用いた検証により,従来モデルでは正確にSlow Featureを抽出できない雑音環境下でも,提案モデルでは正確なSlow Featureの抽出が実現されることが示された.加えて,海馬細胞で見られる周期発火状態における神経細胞ダイナミクスや情報統合機序の性質を明らかにするために,スパイク応答モデルや位相振動子モデルを用いた理論解析や数値シミュレーション研究を進めることにより,情報符号化様式の性質や位相応答曲線がもつ非線形性の性質を明らかにした.さらに,顔認識に重要とされる連続的情報表現と離散的情報表現をスパースな発火パターンで実現する神経回路網モデルを構築し,情報統計力学に基づいた理論解析を行った.提案モデルに対して安定性解析を行うことにより,顔の角度の情報表現や顔の種類の情報表現に対応するスパースな発火パターンが,安定に存在することを理論的に示した.
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