2009 Fiscal Year Annual Research Report
野外加温操作実験による農耕地土壌の有機物分解に及ぼす温暖化影響の検証
Project/Area Number |
20510020
|
Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
岸本 文紅 National Institute for Agro-Environmental Sciences, 物質循環研究領域, 主任研究員 (60334033)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米村 正一郎 独立行政法人農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (20354128)
|
Keywords | 土壌有機物分解 / 地球温暖化 / 野外加温操作実験 / 土壌呼吸 / 土壌炭素管理 / 温室効果ガス / 農耕地土壌 / 炭素循環のフィードバック効果 |
Research Abstract |
土壌有機物分解の温暖化に対するフィードバックとその制御メカニズムの解明は、農耕地土壌の炭素隔離の気候変動に対する将来予測を行う上で緊急な課題である。本研究は、日本の代表的農耕地土壌(黒ボク土)を対象に、圃場スケールで土壌を温める野外操作実験による土壌有機物の分解に及ぼす温度上昇の効果を定量的に評価し、その制御メカニズムの解明を目的として行う。 本年度は黒ボク土畑圃場(小麦と大豆の輪作)において加温実験を継続し、土壌有機物分解(トレンチチャンバー法)に由来するCO_2フラックスの連続測定を引き続き行った。+2℃の加温が低温域(冬-初夏:小麦作)ではCO_2フラックスを促進(対照区に比べ約10%高く)、高温域(夏-秋:大豆作)ではCO_2フラックスを低下させる傾向がみられた(対照区に比べ約8.5-17%低く)。フラックスの見かけ温度依存性(Q_<10>)が対照区の2.92であるに対して加温区の値は2.60であり、圃場レベルの加温はフラックスの見かけ温度依存性を低下させたことが分かった。その理由として、35℃から45℃の高温域では土壌有機物分解の温度依存性が低くなること、および高温乾燥が土壌有機物分解をより強く抑制することが培養実験から推察された。また、土壌温度の影響を除いた正規化されたフラックスと土壌水分の関係は上凸型の関係であり、極端な乾燥または加湿はフラックスを抑制することが圃場レベルでも明らかになった。すなわち、圃場レベルの加温による土壌有機物分解への促進効果が低温域(冬-初夏)において顕著であるに対して、高温域(夏-秋)ではその促進効果が土壌水分ストレスによる分解抑制効果によって打ち消されたことが明らかになった。土壌有機物分解に及ぼす加温効果の大きさは土壌水分に左右され、温暖化への土壌炭素動態の応答予測には土壌水分の影響を考慮すべきことが圃場レベルで検証された。
|
Research Products
(4 results)