2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20510142
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Research Institution | International Christian University |
Principal Investigator |
海蔵寺 大成 国際基督教大学, 教養学部, 教授 (10265960)
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Keywords | Behavioral Finance / Finance / Econophysics |
Research Abstract |
昨年度開発したバブルとバブル崩壊の理論モデルをさらに発展させた。モデルの概要は、次のとおりである。伝統的なCAPMに基づいて投資活動を行う「合理的投資家」と他の投資家の動きと市場のモメンタム(トレンド)を予測して投資活動を行う「ノイズトレーダー」が市場に存在すると仮定する。 ある確率で価格の上昇トレンドが現れるとノイズトレーダーはさらなる上昇を予想して積極的に投資を行い、他のノイズトレーダーがこの動きに同調するため上昇トレンドが強化されバブルが発生する。バブル終盤に価格のモメンタムが低下すると、突然崩壊(相転移)が起きる。 本年度はさらに次のことを研究した。 1. 確率的効用関数の最大化を通じて投資選択を決めるノイズトレーダー・モデルと、エントロピー最大化モデルの理論的な関係をこの分野の文献をもとに考察した。エントロピー最大化問題の双対性から、2つのモデルが同一であることが明らかになった。この結果は、統計物理学の基礎原理であるエントロピー最大化の観点から行動ファイナンスでしばしば議論されるノイズトレーダーの行動原理を導くことができることがわかった。 2. ノイズトレーダーの存在が、株式市場や為替市場で必然的に引き起こすバブルとバブルの崩壊は、エントロピー最大化モデルにおける相転移現象に対応することを理論的に示した。この結果はモデルが相転移(暴落)を起こす前後のノイズトレーダーの投資行動と市場価格の関係を理論的に分析することで、これまで「なぞ」とされてきた株式市場や為替市場の暴落時のボラティリティの変動のメカニズムを理解できると考えられる。
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Research Products
(4 results)