2010 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長下の南アジア地域における宗教と観光に関する比較研究
Project/Area Number |
20510235
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Research Institution | Nara Prefectual University |
Principal Investigator |
中谷 哲弥 奈良県立大学, 地域創造学部, 教授 (50285384)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
外川 昌彦 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (70325207)
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Keywords | 南アジア / 観光 / 宗教実践 / 中間層 / ライフスタイル / インド・バングラデシュ / 文化人類学 |
Research Abstract |
本研究は、インドとバングラデシュを対象に、経済成長を続ける南アジア地域の社会変容を「余暇社会」という観点から分析することを目的とする。本研究が明らかにしようとする領域は、(1)観光を中心とする余暇活動の実態分析、(2)日常及び余暇における宗教実践の実態分析、(3)観光と宗教が交わる領域の分析の大きく3つに分かれる。本年度、研究代表者の中谷は(1)に関して、昨年度に発表したインド側における中間層と国内観光に関する論考を踏まえて、比較対象のためにバングラデシュにおいて観光動向の調査を行った。具体的には、国内中間層及び外国人を主たるターゲットとしてフェアトレード的な形で手工芸品の販売や農村観光を催行する現地NGOを取り上げて、団体代表へのインタビューや首都ダッカ郊外の農村観光拠点への訪問調査を実施した。これにより、バングラデシュの中間層はインドの中間層同様に、自国の農村文化や宗教伝統を余暇やレジャーの領域において対象化しつつあることが判明した。このことは、今後、中間層による国内観光は外国人によるインバウンド観光ともクロスしていくことで、経済のグローバル化とともに社会生活の領域においてもグローバルな領域との接合をもたらす可能性を示していることがうかがえた。また、(2)に関して、インドの首都ニューデリーの中間層の居住地において毎年開催される宗教行事について、国際会議において発表を行った。研究分担者の外川は、(3)に関して、昨年度発表を行ったバングラデシュ東部ノアカリの事例についてさらに考察を進めるとともに、成果とりまとめのために南アジアの宗教と観光に関する資料の収集をさらに行った。また、カナダ・トロント大学で開催された国際宗教学会に参加して、南アジアのヒンドゥー教の伝統に関する報告を行った。年度末には、代表者の所属する奈良県立大学において、インドとバングラデシュの両国で昨年度に実施した観光行動に関する社会調査の結果を報告し、他分野の観光研究者との議論を通じて、今後の成果のとりまとめ方や研究の発展性についての検討を行った。
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